トルコ、3カ月間の非常事態宣言 「テロ関係者を排除」- 日本経済新聞(2016年7月21日)

http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM21H3M_R20C16A7MM0000/
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イスタンブール=佐野彰洋】トルコのエルドアン大統領は20日夜(日本時間21日朝)、15日夜に発生した軍の一部によるクーデター未遂事件を受けて3カ月間の非常事態を宣言した。「テロ組織に関係する者を全て排除する」ことが目的だと説明した。事実上の大統領権限強化策で、反政権勢力の大規模排除に拍車がかかる公算が大きい。トルコの強権化に対する欧米の懸念が深まりそうだ。
20日、緊急招集した国家安全保障会議と、続いて開催した閣議で決定した。憲法の規定によると、非常事態宣言の発効には国会承認が必要だが、与党が単独過半数議席を保持しており、承認は確実とみられている。
発効後は大統領を議長とする閣議で、法律と同等の効力を発揮する政令を出すことが可能になる。国会での審議を省略できるため、野党による政権監視が難しくなる。国民の権利や自由が大幅に制限される恐れがある。出版や放送などメディアの活動が監視下に置かれるとの指摘もある。
トルコ憲法は非常事態時に、国民の基本的な権利や自由を部分的、あるいは全体的に停止する可能性があるなどと規定。また、閣議で出す政令違憲性は問えないことになっており、エルドアン氏は柔軟に大規模排除を進められることになる。
ドイツのシュタインマイヤー外相は20日、トルコの非常事態宣言を受けた声明を出し、非常事態宣言は真に必要な期間に限って実施し、可能な限り早期に解除するよう求めた。
トルコ政府はエルドアン氏の政敵で米国に住むイスラム教指導者ギュレン師がクーデター未遂事件に関与したと断定し、これまでに同師支持者とみられる軍人ら9000人を拘束するなど軍や公的機関から同師支持勢力の大規模な排除を続けている。拘束や解職処分の規模は6万人を超えた。
20日には、大学教員や研究者の海外出張禁止を通達し、海外にいる教員らに早期の帰国を求めた。国家教育省はこれまでに2万2000人の教員らを解任、私立の教育機関で教える2万1000人の免許取り消しも決めた。表向きの理由はギュレン師支持者の排除だが、政権の意に沿わない世俗派やリベラル派勢力にまで弾圧が及んでいる可能性が高い。
ドイツのメルケル首相はエルドアン政権の強権策について「大きな懸念がある」と批判した。ケリー米国務長官は「民主主義を全面的に尊重することが重要だ」と大規模な拘束や解任などの自制を求めた。
海外からの批判に対し、エルドアン氏は「民主的な議会制度を維持する」と、中東の衛星テレビ、アルジャズィーラのインタビューで語った。
クーデター未遂事件は軍の一部がイスタンブールの国際空港や橋を封鎖し、首都アンカラでは国会や大統領宮殿などを攻撃。エルドアン氏によると、多数の市民を含む246人が犠牲になり、約1500人が負傷した。クーデター勢力側を加えた死者数の合計は300人を超えるとみられる。