10代の投票率 まずまずの滑り出しだ - 毎日新聞(2016年7月14日)

http://mainichi.jp/articles/20160714/ddm/005/070/065000c
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今回の参院選で新有権者となった18、19歳の投票率総務省の推計で45・45%だった。若者の投票率低下に歯止めをかける、足がかりとなり得る数字だ。
高校での主権者教育の積極化などが、一定の効果をあげたとみられる。こうした取り組みを一過性のものに終わらせないことが肝心だ。
公職選挙法が改正され、選挙権年齢は「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げられた。これに伴い約240万人の新有権者が誕生した。
参院選投票率は54・70%と過去4番目の低さだった。10代の投票率はこれを9・25ポイント下回った。
メディアなどで「18歳選挙権」が盛んに報じられた割にあまり投票率は高まらなかったのではないか、との見方もあるかもしれない。
だが、3年前の参院選を例に取ると全体の投票率52・61%を支えるのは中高年の有権者で、20代は33・37%だった。今回20代の投票率はまだ未集計だが、10代の投票率はこれを上回っている可能性が高い。
とりわけ興味深いのは、18歳の投票率が51・17%に達し、19歳の39・66%を大きく上回ったことだ。
18歳の場合、高校3年生の有権者も含まれる。政府は高校生も投票することから主権者教育の推進にかじを切り、模擬投票や自由討論を奨励してきた。受験世代でもあり選挙への無関心が危ぶまれた18歳の投票率が比較的高かったのは、こうした取り組みも反映した結果だろう。
高校での主権者教育をめぐっては教員による政治的中立の維持や、学校外での政治活動参加の解禁に伴う混乱などを懸念する声もあった。これらの点に一定の留意は必要だ。だが、教育現場や若者の創意を生かしていくためにも、過剰な規制に走らず自主性を尊重すべきだ。
一方、19歳の投票率がなぜ低くなったかは、さまざまな側面から点検する必要がある。大学進学や就職などの事情で引っ越しても、住民票を移さない若者が多いことがひとつの要因ではないか。
大学生の場合、4年間の生活を送る自治体に住民票を移すのが原則だ。高校や大学は、生徒や学生にもっとこの点を周知してもらいたい。
大学も投票率アップや主権者教育と無関係ではない。キャンパスに期日前投票所を設けたり、学生が候補の討論会を開催したりするなどの試みが広がっている。
「18歳選挙権」は地方選挙にも適用される。自治体がまちづくりに若者を参加させ、行政との接点を設けるような活動も効果的なはずだ。
若い世代と政治の距離を縮める責任を負うのは政党だけではない。着実に取り組みを進めていきたい。