<参院選 一票の現場から>憲法(下)若者の思い 9条の価値を意識:千葉 - 東京新聞(2016年7月8日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/chiba/list/201607/CK2016070802000184.html
http://megalodon.jp/2016-0709-1227-23/www.tokyo-np.co.jp/article/chiba/list/201607/CK2016070802000184.html

十八歳、十九歳が初めて投票する参院選で、憲法論議を注視する若者たちがいる。憲法がうたう不戦の誓いや労働者の権利をかけがえのない価値と感じ、国民の理解が深まらないまま、国会で改正に向けた動きが本格化しかねないことに危機感を抱く。 (中山岳)
「いま憲法を変えたら、もっと危ない方に行く」
若者の投票率向上を図るNPO法人「ドットジェイピー」が三日に柏市で開いた勉強会。「憲法改正すべきか」を考える討論で、共栄大学二年の山田夏美さん(19)=柏市=が反対した。
昨年十一月、大学で憲法集団的自衛権を学んだ。「九条で日本は戦争をしないと海外に発信してきた。変えることは、これまで守ってきたものを無くし、外国への挑発にもなる」。山田さんは、今の憲法をめぐる議論は政治家の思惑で進んでいて「国民の議論が追いついてない」と訴えた。
討論会では、九条を変えるべきだという意見もあったが、千葉大一年の川尻岳宏さん(18)=千葉市=は「九条は絶対に手をつけるべきでない」と切り出した。
昨年、国会で安保法が成立した経緯から「憲法は国民が権力を縛るためにあるのに、政府が解釈を変更して押し切ったのはおかしい」と批判。「九条は戦争しない理念を掲げている。現実に対応していないとの意見もあるが、理念は目指すべきもの。日本国民が自らそれを降ろしてしまうのか」と訴えた。
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憲法は、僕らが働く権利も守っている」。高校三年の條大樹さん(17)=船橋市=は、昨年三月から飲食店でアルバイトした経験から、こう感じている。
働き始めて間もなく、時給の計算が十五分単位の切り捨てで、一分単位で計算するより損をしていると気付いた。初任給は、店で使う靴代が天引きされていた。「何かおかしいなと感じた」と振り返る。
その後、都内の高校生がアルバイト先と団体交渉して労働条件を改善させたケースを知った。昨年八月、その高校生らと労働組合「首都圏高校生ユニオン」を設立。自分のバイト先と団体交渉し、時給の計算などが見直された。
條さんは安保法制に反対するデモにも参加し「労働者の権利もデモをする表現の自由も、憲法が守っている」と実感する。十七歳なので参院選は投票できないが、一足先に選挙権を得た同級生らに期待する。「とりあえず投票に行って、自分の考えで一票を入れてほしい」

■戦争の放棄 
【第9条】
(1) 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
(2) 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

表現の自由 
【第21条】
(1) 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
(2) 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

■団体交渉権 
【第28条】
勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。