原発依存からの脱却 道筋の明示は国と事業者の責務 - 愛媛新聞(2016年06月30日)

http://www.ehime-np.co.jp/rensai/shasetsu/ren017201606306216.html
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四国電力など原発保有する電力9社の株主総会が、一斉に開かれた。再稼働に異を唱え脱原発を求める株主提案が3年続けて全社で出されるなど、根強い不安を裏付けたといえる。
脱原発の議案は全て否決された。「再稼働で黒字になった」(九州電力)、「電気料金の値下げを目指す」(関西電力)など、経営陣は発電コストの優位性を強調。「再稼働ありき」で異論に耳をふさぐ姿勢を危惧する。株主の後ろには原発の安全性に疑問を抱く多くの消費者がいると、肝に銘じるべきだ。
再稼働を急ぐ背景には、電力小売りの全面自由化に伴う競争激化がある。危機感を募らせる原発事業者は価格面で優位に立てると訴える。しかし、原発の発電コストは決して安くない。燃料だけでなく安全対策や廃炉費用なども考慮すれば、火力発電より高くつくとの専門家の試算を直視する必要がある。
四電の総会では脱原発をはじめ、再生可能エネルギーの積極導入を求める提案もあった。小売り自由化から3カ月がたち、2020年には発送電分離が控える。経営環境の劇的な変化に直面する今こそ、原発依存からの脱却に向けて一歩を踏み出す好機と捉えたい。
そのためには、「原発頼み」の経営戦略を国が支える構図を変えねばなるまい。安倍政権は原発を「重要なベースロード電源」として活用すると明言し、新増設さえ視野に入れる。四電は来月下旬に伊方原発3号機を再稼働させる方向で調整している。原発政策は参院選の主要な争点に位置付けられるべきだ。与党だけでなく野党までもが積極的に取り上げない現状に、もどかしさが募る。
自民党は公約に「再稼働を進める」と明記した。連立を組む公明党は「新設を認めず原発ゼロを目指す」との立場。温度差を隠すため、あるいは世論の反発が強い政策を前面に出すのは得策でないとの判断から、意図的に街頭演説などで言及を避けているのは想像に難くない。
野党も足並みが乱れている。共産、社民、生活の各党は再稼働反対を鮮明にする。一方「30年代原発ゼロ」を掲げる民進党は、安全確認や責任ある避難計画がなければ再稼働を認めないとしており、条件が整えば容認するとも読める。与党との対立軸が曖昧になれば、共闘に影を落とすことにもなろう。
熊本地震原発の安全性への懸念は高まっている。与野党とも党利党略を排して真摯しんしに政策を語り、原発へのスタンスで投票先を選びたい有権者に選択肢を示してほしい。
東京電力福島第1原発事故から5年余り。再生エネ導入拡大と、原発に依存しない社会の実現は事故の教訓であり、方向性は全政党が一致している。先送りは許されない。速やかに電源多様化の道筋を描くことは国の責務。原発事業者も国の方針を待つことなく、経営戦略の転換を急がなければなるまい。