「産経新聞」選挙情勢報道の実態 - HUNTER(2016年6月30日)

http://hunter-investigate.jp/news/2016/06/post-900.html

参院選の公示から3日目に、大手メディアが一斉に伝えた「自公勝利」の選挙情勢調査結果。少ないサンプル数の同一データを使い回す手法や、論戦も深まらぬ時期での調査には賛否両論あるところだろう。
数字の信ぴょう性はともあれ読売、日経、毎日、朝日、共同の記事は、一応裏付け数字を基にしたもの。ところが、調査もせぬまま与党勝利を断定するような記事を垂れ流した新聞があった。政権擁護に徹する「産経新聞」である。
ここまで断定的に自公勝利を予測するからには、確かな裏付けがあるはず。一体どれくらいのサンプルをとって情勢調査を行ったのかと記事を隅々まで読んでみたが、産経が調査を実施したという記述がない。驚いたことに、自公勝利の裏付けは記事冒頭の「産経新聞社は全国の総支局などを通じて、7月10日投開票の参院選の序盤情勢を探った」結果であることが分かった。
補強材料として使ったのが共同通信の調査結果。全体の情勢を断定的に書いたあとで「共同通信社が22,23の両日に実施した電話世論調査でも同様の傾向が出ている」。サンプル数も含めた共同の調査結果は明らかにせず、傾向が同じだから自社の記事は正しいという論法だ。産経は独自の調査を行わずに全選挙区の情勢を推測、信ぴょう性を持たせるために他社の調査結果をいいように使っていた。
結論から言って、この記事の信頼性はゼロ。捏造と言われてもおかしくない内容だ。産経の組織は東京、大阪の両本社の他、総局が全国に10。東北、千葉、さいたま、横浜、中部、京都、大阪、神戸、広島、九州だけだ。支局にしても36カ所しかなく、九州に至っては熊本と鹿児島の2つだけ。当然、記者の数も限られる。その体制で、こうまで断定的に報じることができるような詳しい情勢が分かるとは思えない。裏付けをとるのは報道のイロハだろうが、それにあたるものがない以上、産経の記事はただの推測に過ぎない。推測で特定政党の優勢を報じるのは、世論誘導以外の何者でもあるまい。

(参院選)序盤情勢 改憲勢力、3分の2うかがう 与党は改選過半数の勢い 民進は10議席以上減が確実 共産は躍進か - 産経ニュース(2016年6月23日)
(1/2)http://www.sankei.com/politics/news/160623/plt1606230055-n1.html
(1/2)http://megalodon.jp/2016-0630-1449-19/www.sankei.com/politics/news/160623/plt1606230055-n1.html
(2/2)http://www.sankei.com/politics/news/160623/plt1606230055-n2.html
(2/2)http://megalodon.jp/2016-0630-1449-57/www.sankei.com/politics/news/160623/plt1606230055-n2.html

産経新聞社は全国の総支局などを通じて、7月10日投開票の参院選の序盤情勢を探った。自民、公明両党の獲得議席安倍晋三首相(自民党総裁)が目標に掲げる改選過半数の61議席を大きく上回る勢いだ。自公におおさか維新の会などを加えた「改憲勢力」は憲法改正の国会発議に必要な3分の2(162議席)確保をうかがう。