<参院選>有権者への道(下) 先輩、選挙に行ってください:神奈川 - 東京新聞(2016年6月11日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/list/201606/CK2016061102000149.html
http://megalodon.jp/2016-0612-1056-41/www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/list/201606/CK2016061102000149.html

「先輩、選挙に行ってください」−。横浜市港南区にある五つの県立、市立高校美術部員らが、こんな思いで投票を促すポスターを描いている。区内の期日前投票所に貼られる。
県立横浜明朋高校一年の光田愛海(あみ)さん(15)=栄区=は、投票用紙が降り積もって日本列島を形作る様子と、大空に羽ばたくハトを描いた。標語は「未来を創(つく)る 新しい一票」。「一票に『新しい』を付けて十八歳選挙権の意味を込めた。その票の積み重なりが日本をつくり、平和を未来につないでいくイメージを表現した」
選挙権年齢の引き下げは、昨年六月に決まった。光田さんは中学三年の時、担任教諭から「当選する政治家を決めるのは、みんなだ。投票しないと政治家を批判する資格はない」と教わった。三歳上の姉や高校三年の先輩ら、身近に選挙権を持つ人が増え、おのずとアイデアは固まっていった。
日本列島には空白を設けた。「みんなが行かないと、日本は完成しない」。周囲からは「今年から投票できるらしい」「私、ムリ」といった話が聞こえてくるが、「先輩が選挙に行きたくなるポスターにしたい」。

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県立永谷高校でも、いずれも二年の木村匠(たくみ)さん(16)=川崎市宮前区=と、長尾紗也香さん(16)=港南区=が制作に取り掛かっていた。木村さんは中央に花を配置し、「票創平和」の四文字を大きく描いた。「シンプルに一票が平和をつくると表現した」
長尾さんは、長い目で見て若者の投票率を上げようと考えた。「自分より下の世代に見てほしい」と、白雪姫など童話のキャラクターが投票所に行く様子を描き、明るい色づかいにした。標語も「私たちの未来のために 大切な一票を」と、直接的に訴えた。
二人とも「政治には自分たちの関心事は解決できない」という思いもある。木村さんはブラック企業をなくしてほしいと願うが、「政治家が法律をつくったところで、パワハラはなくなるのか」と語る。長尾さんはいじめ問題に関心があるが、「政治家同士がけんかしている。大人の人間関係が穏やかじゃない」。
それでも、「政治は難しいけど、少しずつ知っていくようにする」(長尾さん)「これ、という政党があれば投票する気持ちになる」(木村さん)と感じている。今の政治に疑問を抱きつつも、自らが投票する未来に向け、希望は持ち続けている。 (志村彰太)

<県内の主権者教育> 県立高校では2010年から全144校で、実際に立候補した人や政党を選ぶ模擬投票を全国に先駆けて始めた。11年度から、政治参加への意識を高める「主権者教育」を総合学習などの時間に行っている。模擬投票は「選挙時期が予測しやすい」(県教委)参院選に合わせて3年に1度実施し、本年度も参院選の投開票日前に予定されている。全国的には昨年秋、文部科学省総務省が、共同製作した副教材を全校に配布。ただ、配布時期が遅かったため、昨年度に高校を卒業した有権者は副教材を使った教育を十分受けていない。