定年後再雇用で同じ仕事 賃金引き下げは「違法」- 東京新聞(2016年5月14日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201605/CK2016051402000145.html
http://megalodon.jp/2016-0514-1100-10/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201605/CK2016051402000145.html

横浜市の運送会社を定年退職後、有期契約で再雇用された運転手三人が「仕事内容は全く変わらないのに、賃金が引き下げられたのは理不尽だ」として起こした訴訟の判決で、東京地裁は十三日、引き下げを違法と判断し、運送会社に定年前と同水準の賃金を支払うよう命じた。
労働契約法二〇条は有期契約の労働者と正社員の待遇に不合理な格差を設けることを禁じている。原告側代理人によると、この規定に基づいて定年後の再雇用者について違反を認めた判決は初めてで、再雇用者の待遇改善を巡る議論に影響しそうだ。
判決理由で佐々木宗啓(むねひら)裁判長は「コストの増大を避けつつ高齢者の雇用を確保するために、再雇用後の賃金を下げること自体は合理的だが、仕事内容が同じ場合は賃金格差があってはならない」と指摘した。
その上で原告三人のケースを検討し「仕事は正社員と同じで、定年前と能力に差があるとも考えにくい。運送会社は再雇用制度をコスト削減の手段としていた側面があるが、人件費圧縮が必要な財務状況ではなかった」として、違法な賃下げと判断した。
三人は横浜市の「長沢運輸」に勤務。判決によると一四年三〜九月の定年退職と同時に会社と再雇用契約を結び、正社員と同様に大型タンク車を運転していたが、賃金は定年前の七〜八割に減った。
判決は長沢運輸に、これまでの引き下げ分として一人当たり九十八万〜二百四万円を支払い、今後は定年前の給与水準に戻すよう命じた。
原告側代理人の花垣存彦(ありひこ)弁護士は「定年後は賃金が下がって当然との考え方が広がる中、画期的な判決だ。同じ業界で働く六十歳以上の人にとって大きな意義がある」と評価した。
原告の鈴木三成さん(62)は判決後「今も全く同じ車を運転し、月の走行距離は四千キロにもなる。朝五時ごろから働く日もあり、賃金だけ下がるのは不合理だと思っていたので、うれしい」と話した。

労働契約法
(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)
第二十条  有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。