http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201603/CK2016031602000136.html
http://megalodon.jp/2016-0316-0955-41/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201603/CK2016031602000136.html
夏の参院選をめぐり、六月に施行される改正公職選挙法は、十八歳の高校三年生らに投票だけでなく選挙運動も解禁する。しかし、同じ三年生でも十七歳は投票も選挙運動も認められず、違反すれば罰則も。選挙運動できる生徒と、違反すれば処罰される生徒が同じ教室にいることになる。法施行後、初の国政選挙となる可能性が高く、混乱も予想される。関係者は注意を呼びかけている。(高山晶一、安藤美由紀)
選挙期間中に電話で知人に投票を呼びかけるなどの選挙運動は、これまで二十歳以上に認められていた。改正公選法は十八歳以上に引き下げたが、十八歳未満は禁止されたままだ。
違反した場合、「一年以下の禁錮または三十万円以下の罰金」や「五年間の選挙権停止」に問われる。警察庁によると、二〇〇九年衆院選で七人、一〇年参院選で一人、一二年衆院選で三人が、実際に「未成年者の選挙運動」を理由に送致されただけに、高校生への周知徹底が求められている。
文部科学省は昨年、高校生が放課後や休日、校外で行う選挙運動を容認することを都道府県教育委員会などに通知。「生徒が公選法違反に問われないように」と指導の徹底も促した。
選挙運動に詳しい政治コンサルタント高橋茂さん(55)は、選挙運動ができる生徒とできない生徒の区別について、現場の教師も「把握しきれない」と指摘する。選挙違反のことを意識し過ぎると「インターネット選挙運動が解禁されたのに、一番ネットを使う若者が参加しづらくなる」と懸念する。
主権者教育に力を入れる芝浦工業大柏中学高等学校(千葉県柏市)は、生徒に「選挙運動ができる人と、できない人がいる」と注意を促している。杉浦正和教頭(64)が懸念するのは、生徒の何げない会話が選挙運動と指摘されかねない点だ。
杉浦教頭は、「政治的中立」を強く求める文科省の教員向け指導用資料が、生徒の政治的発言にも厳しい指導を求めている点を憂慮。「世の中にはいろんな学校がある。十八歳未満の生徒が『好きな政党はこれ』と友人に話しただけで、支持を求める発言とみなされかねない」と指摘。学校が監視を強めるようなことがあれば、若者の政治参加を促すという改正法の趣旨も損なわれかねない。
<選挙運動> 特定の候補者を当選させるため、他人に働き掛けるなどの行為。公示・告示から投票日前日までの間だけ認められている。公示・告示前の事前運動は禁止されている。当選を目的とせず、政治上の主張を訴えるだけの日常的な「政治活動」とは区別される。18歳未満(改正公選法の施行前は20歳未満)の選挙運動は禁じられているが、一般的なデモや集会への参加などは選挙運動ではなく政治活動に当たるため、18歳未満が行っても罪に問われない。