都教委 4校廃止を決定 「夜間定時制は学びの安全網」 代替に疑問も - 東京新聞(2016年2月13日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201602/CK2016021302000140.html
http://megalodon.jp/2016-0213-1209-02/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201602/CK2016021302000140.html

東京都立高校の夜間定時制四校を削減する計画案が、十二日の都教育委員会で決定された。早ければ二〇一八年度から入学生の募集停止が始まる。都教委は不登校経験者らが学び直す単位制の定時制高校「チャレンジスクール」の増設などで受け皿を確保する方針だが、夜間定時制の卒業生らは「多様な生徒が学んでいる夜間定時制を代替できない」と撤回を求めている。 (松村裕子)
廃止対象となった品川区の小山台高校の夜間定時制。今月三日、全日制と入れ替わりに夕方の五時半から授業が始まり、授業が進むうちに外は真っ暗になった。大野哲也副校長は「全日制に通えなかったり高校を中退した生徒のほか、年配の社会人ら多様な人が通っている」と話す。
「勉強して大学に進みたい。夜間定時制が、あってよかった」
中学一年に不登校になった男子生徒(16)は昨年四月、立川高校の夜間定時制に入った。不登校経験者や高校中退者向けのチャレンジスクールは応募倍率が高いため、受験をあきらめた。母子家庭で、私立高校に行く経済的な余裕もない。夜間定時制では中学の内容から学び直し、先生に何でも質問できる雰囲気が気に入っているという。
区立の夜間中学に通っているネパール人男性(19)は今春、夜間定時制を受験するつもりだ。日本で働く父親と二年前に来日。日常会話には困らなくなったが、漢字の読み書きは難しく、全日制は言葉の違いによる壁が高くて断念した。「夜間定時制で学んで、コンピューターエンジニアになりたい」と夢を抱く。
夜間定時制の卒業生や元教員らでつくる「都立高校のいまを考える全都連絡会」などは、「チャレンジスクールは夜間定時制の代替にならない」として、これまでに一万二千人分を超える反対署名を都教委に提出、十二日にもあらためて決定の撤回を求めた。
チャレンジスクールは、夜間定時制と同じ定時制高校で、現在五校あるが、一五年度の平均応募倍率は一・六六倍で、全日制の一・五〇倍よりも高い。
また試験は面接や作文などで、連絡会の事務局で元都立高教員の佐藤洋史(ひろちか)さん(70)は「日本語が不自由な外国人は入学しにくい」と指摘。また「チャレンジスクールには、不登校となったりして入学した若い世代が多く、若いときに学ぶ機会を逸した年配の社会人は通いにくい」と懸念する。
連絡会が集めた反対の共同声明には、夜間中学で学ぶ人々を描いた映画「学校」の山田洋次監督や、夜間定時制で教えた経験のあるノーベル医学生理学賞大村智・北里大特別栄誉教授らも名を連ねている。
声明に賛同する藤田実・桜美林大教授は「夜間定時制不登校や貧困家庭の生徒にとってセーフティーネット(安全網)の役割があり、廃止は格差が拡大している現在の状況に逆行している」と話している。

<チャレンジスクール> 小中学校での不登校経験者や高校中退者を主に受け入れる定時制高校(3部制)の単位制総合学科。午前、午後、夜間の3部がある。4年が基本だが、履修の仕方によっては3年間で卒業できる。現在5校あるチャレンジスクールのうち、2015年度の応募倍率が最も高かったのは大江戸(江東区)の2.13倍。