(余録)パリの同時多発テロで不安が世界に広がるが… - 毎日新聞(2015年12月27日)

http://mainichi.jp/articles/20151227/ddm/001/070/147000c
http://megalodon.jp/2015-1227-1113-12/mainichi.jp/articles/20151227/ddm/001/070/147000c

パリの同時多発テロで不安が世界に広がるが、過去にもテロが多発した時期がある。1970年には2月にスイス航空機が爆破され、3月によど号ハイジャック事件が起きた。「10月の危機」と呼ばれたのがカナダの連続要人拉致事件だ。
仏語人口の多いケベック州の独立を求める過激派が同州労働相や英商務官を拉致し、労働相は殺害された。当時のピエール・トルドー首相は軍を動員して事態を収拾する一方、対立克服のため、異なる民族集団を対等に扱う多文化主義の導入を宣言した。
その長男のジャスティン・トルドー氏(44)が10月の総選挙で勝利し、首相に就任した。「ここも2世か」と思わないでもないが、閣僚30人に男女半数ずつを選び、先住民や移民、障害者を起用するなど斬新な政治スタイルに注目が集まる。
男女同数の理由を問われると「2015年だから」。時代の要請という意味を簡潔に示す答えに、女性の地位向上のため、国連親善大使を務める英女優のエマ・ワトソンさんはツイッターで「最近では一番クール」と称賛した。
対外関係を担当する「外交・貿易・国際開発省」は「グローバル連携省」に改名された。内外の区別より世界の一員を強調するイメージだ。シリア難民2万5000人の受け入れを表明し、今月10日には首相自ら難民を出迎えた。
有力紙「トロントスター」も1面社説で「あなた方の存在がクリスマスの季節をさらに輝かせる」と難民にエールを送った。多文化主義の理想を守ろうとする姿勢だ。世界的に反移民や排外主義的な言動が声高に叫ばれる中、そうした流れに抗するカナダの動きを見守りたい。

関連サイト)
カナダ新首相、「イスラム国」に対する空爆作戦からの撤退を通達 - AFPBB News(2015年10月29日)
http://news.livedoor.com/article/detail/10731678/