政治活動届け出 18歳選挙権にそぐわぬ - 毎日新聞(2015年12月22日) 

http://mainichi.jp/articles/20151222/ddm/005/070/033000c
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「18歳選挙権」の実現を踏まえ、高校生の学校外での政治活動が認められたことに伴う新たな動きが起きている。毎日新聞の調査によると、デモや集会などの活動への生徒の参加について、九つの県や政令市の教育委員会が学校への届け出制の導入を検討しているという。
文部科学省の新通知は校外での政治活動を解禁した。学校による関与を認めた範囲は限定的だけに、活動全般について届け出を義務づけることは過度の干渉となりかねない。生徒の主体性を尊重するという原則を教育界は再確認してほしい。
高校生の政治活動について、文科省学生運動が盛んだった1969年に学校側に出した通知を根拠に「教育的観点から望ましくない」として、学校の内外を問わず、制限してきた。選挙権年齢の20歳から18歳への引き下げに伴い、10月に出された新通知は、学校内の政治活動は従来通り禁止した。
一方、校外での活動は「家庭の理解の下、生徒が判断して行う」と容認した。高校生の一部は有権者として選挙運動が認められるうえ、政治離れが目立つ若者の政治的関心を育むためにも、主体性を重んじていくことが必要との判断からだ。
ところが、一部の教委はデモや集会参加の学校への届け出制を検討している。届け出制導入についての判断を学校に委ねる道県・政令市も11にのぼるという。
今年は安保関連法に反対する学生らのデモが注目された。学校側として、活動を把握しなければ不安ということかもしれない。だが、たとえ「活動を妨げるものではない」と説明しても、学校による監視、抑制につながったり「集会やデモへの参加は好ましくない」とのメッセージと取られたりするおそれがある。
確かに新通知は校外の政治活動であっても「必要かつ合理的な範囲内で制約を受ける」とし、場合によっては学校が禁止、制限できるとしている。ただし、そこでは「違法、暴力的なおそれが高い」「学業や生活に支障がある」などの事例が列挙されている。政治活動全般への学校の関与を是認したとは読み取りがたい。
高校生は、18歳に達し校外で選挙運動に携わるケースも今後想定される。学校の関与が行きすぎれば、有権者の権利を侵害しかねない点もわきまえるべきだ。
高校など教育現場は18歳選挙権導入に伴い、主権者教育と政治的中立をどう両立させていくかなどの課題にも向き合っている。手探り状態にある不安は理解できるが、若者が自主的に政治に関与していくことを尊重できないようでは「18歳選挙権」時代にそぐわない。