地域と学校 教育に多様な論議を - 朝日新聞(2015年12月22日)

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学校と地域が力を合わせて子どもを育てる。そんな環境づくりを進めるための手立てを、中央教育審議会が答申した。
住民らが登下校を見守ったり、放課後の学習を支えたりと、さまざまな活動がある。
そうした取り組みを総合的に進めるために「地域学校協働本部」を全小中学校区をカバーしてつくる。さらに住民も学校と共に教育を考え、意見する「コミュニティ・スクール」の指定を各公立学校でめざすという。
学校はいじめや不登校など、数多くの課題に直面している。多くの地域も、都市化や過疎化など人口や社会の変化により、人のつながりが弱まっている。
子どもを中心にして学校と地域が支え合うことは重要だ。教育だけでなく、まちづくりにも役立つだろう。
住民による学校支援はすでに色々な形で広がっている。登下校時だけでなく、朝の時間に住民が本の読み聞かせを担うなどの公立小中学校は6割近い。
学校側も、子どもを町おこしや防災活動に参加させるといった取り組みが増えている。
答申は、そんな流れを後押しするものといえる。各教育委員会は地域の実情をふまえながら進めてほしい。
何より気をつけるべき点は、学校と地域とが対等な目線に立つことではないか。どちらかが大きな声をもつというのでは、「協働」とはいえまい。
地域にはさまざまな考えや立場の人々がいる。校長が考えを押しつけたり、動員したりしてはパートナーではなくなる。住民側も、学校の多忙さや家庭の大変さへの理解が要る。
両者の関係は一筋縄ではいかない。率直な対話を積み重ねることを心がけるべきだろう。
「コミュニティ・スクール」の制度は実は10年あまり前にできていたが、これまで全校の1割も指定されてこなかった。学校が批判の的になるのでは、と警戒する教委が多いからだ。
そのため答申は、住民、保護者らが学校運営を話し合う協議会について、「校長のビジョンを共有し賛同する」存在と位置づけた。だが、制度の狙いは住民を学校の「辛口の友人」とし、意見を生かすことにある。それを忘れては困る。
国民一人ひとりが教育の当事者になり、「社会総掛かり」での教育をめざす。答申はそんな大きな目標を描いている。
ならば、多様な社会をしっかり反映し、学校と地域で大いに意見を交わすようにしたい。そんななかでこそ、個性豊かな子どもが育つのではないか。