戦禍の記憶 子どもたち学んで 宇都宮空襲の資料完成:栃木 - 東京新聞(2015年12月6日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/tochigi/list/201512/CK2015120602000158.html
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宇都宮市教育委員会は、一九四五年七月の宇都宮空襲について概要をまとめた資料を作った。戦後七十年となり、戦争体験を語り継いできた人たちは高齢化が進み、次世代に戦禍の記憶を伝えていくには、子どもたち自身が学習する必要がある。そんな思いから、市内の公立小学校の全六十八校に配布。授業の教材としても活用されていく。 (後藤慎一)
資料はA3判の両面刷りで、二〇〇一年に市が発行した二百五十五ページの「うつのみやの空襲」から主な部分を抜粋した。空襲で焼け残り、「戦後復興のシンボル」といわれる市中心部の大イチョウについて紹介。なぎなたの稽古をする児童の写真や地図を多く取り入れ、被害の大きさが分かるよう空襲の年表も付けた。
戦争体験者の書いた「リュックを背負った姉の死」という体験談も掲載している。家族で逃げ惑った空襲の日、気がつくと姉が背中のリュックに寄り掛かるように亡くなっていたという文章に加えて、リュックの写真を載せた。
小学校の指導計画では、小学六年生の秋に戦争について学ぶ機会があり、社会科の教科書では広島、長崎の原爆や東京大空襲が取り上げられている。ただ、地元で起きた戦争を学ぶ教材はなかった。これまで教師が個々に資料を作るなどしていたため、オリジナルの教材を求める声も高まっていた。
市教委文化課の担当者は「わかりやすさを重視し、説明文にはふりがなをつけた。同じ世代の子どもたちのインパクトのある話で、戦争の悲惨さを身近に感じてほしい」と話す。
資料は六千部を印刷し、児童に配ったほか、希望する市民にも配る予定。問い合わせは、市教委文化課=電028(632)2768=へ。 
<宇都宮空襲> 1945年7月12日深夜から翌日未明にかけ、米軍が宇都宮市中心部を標的に行った爆撃。市街地の約半分を焼失し、少なくとも620人が犠牲になった。焼夷(しょうい)弾の直撃や避難していた防空壕(ごう)での窒息死などで多くの子どもや女性が被害にあった。軍事施設の多かった宇都宮への空襲は、軍需工場や鉄道関連施設に多かったが、この時は120機ものB29爆撃機が市街地を襲った。