辺野古埋め立て取り消し 国が沖縄知事を提訴 対立、異例の法廷闘争に - 東京新聞(2015年11月17日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201511/CK2015111702000253.html
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政府は十七日、米軍普天間(ふてんま)飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の移設計画をめぐり、翁長雄志(おながたけし)知事による名護市辺野古(へのこ)沿岸部の埋め立て承認取り消し処分を撤回する代執行に向けた訴訟を、福岡高裁那覇支部に起こした。十二月二日に第一回口頭弁論が開かれる。勝訴すれば、知事に代わって処分を撤回し、埋め立てを進める構えだ。政府と県の対立は、異例の法廷闘争に発展した。 
政府側は訴状で「航空機事故や騒音被害といった普天間飛行場周辺住民の生命・身体に対する重大な危険は現実化している」と指摘。移設できなければ「米国との信頼関係に亀裂を生じさせ、わが国の外交、防衛上の不利益は極めて重大」とした。
菅義偉(すがよしひで)官房長官は十七日午前の記者会見で「やむを得ない措置だ」と指摘し、工事を続行する考えを示した。翁長氏に対しては「何ら瑕疵(かし)のない(前知事による)埋め立て承認を取り消した。普天間の危険性をどうするか知事の極めて重要な問題のはず」と批判した。
石井啓一国土交通相は記者会見で「普天間飛行場の危険な状況を放置し、米国との辺野古移設という約束を守れないことになることが公益を害する」と述べた。
これに対して、翁長氏は記者団に「ひと言では言い表せない。後でしっかり説明する」と述べた。夕方以降に記者会見する予定。安慶田(あげだ)光男副知事は「国との法廷闘争だ。県民の意思を法廷でも十分に訴えていく」と記者団に述べた。
埋め立て承認は公有水面埋立法に基づき、国が事務を都道府県知事に委託している地方自治法上の「法定受託事務」。地方自治法の規定では、十五日以内に口頭弁論の期日が設定される。翁長氏は自ら意見陳述する考えを表明している。
翁長氏は十月十三日、仲井真弘多(なかいまひろかず)前知事による埋め立て承認には法的瑕疵があるとして取り消しを決定した。
これに対し、公有水面埋立法を所管する石井国交相は同二十七日、翁長氏の決定を一時的に停止、政府は代執行手続きを進めることを閣議了解した。政府は中断していた現場のボーリング調査を再開し、本体工事も始めた。
一方、翁長氏は、石井氏の決定は不当だと主張し、総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会」に審査を申し出ている。県側は主張が認められなければ、福岡高裁那覇支部に提訴する方針。
政府は一九九五年にも、米軍用地強制使用の代理署名を拒んだ大田昌秀知事(当時)を相手に、代執行に向けた裁判を起こし、勝訴した。国と地方を対等と位置付けた二〇〇〇年の地方分権一括法施行後、政府が知事を提訴するのは初めて。