<千葉から語り継ぐ戦争>記憶のバトン 2人芝居で 成田国際高演劇部あす創作劇:千葉 - 東京新聞(2015年11月14日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/chiba/list/201511/CK2015111402000191.html
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県立成田国際高校演劇部は十五日、成田市公津の杜四の「もりんぴあこうづ」で創作劇「ジャスミンティの頃」を上演する。部員は、一人芝居で昨年、関東大会まで進んだ二年の中村恵さん(16)だけ。今年は同級生の助っ人を迎え、二人芝居に挑戦する。 (渡辺陽太郎)
劇は戦後七十年の夏が舞台。中村さん演じる人間関係に悩み拒食症に陥った高校生のしおりと、軽音楽同好会の佐伯七海さん(16)が演じる認知症の祖母の会話を中心に進む。
祖母は時折しおりを「さとこちゃん」と呼び、女学生だった戦時中の話を始める。現実と幻想が交錯する中、戦争体験者の祖母から戦争を知らない孫に記憶が伝えられる。
空襲など戦争の悲惨さも伝える一方、女学生の恋愛話など、現代の女子高生と変わらぬ姿も描く。顧問の伊三野友章教諭は「テーマは『記憶の継承』。個人に光を当て、教科書などと違った切り口で戦争を伝えたい」と話す。
伊三野さんは、中村さんと戦時中に学生だった女性(86)に取材。関連資料を読み込み、脚本を作った。
中村さんは戦争に対し「怖い」という印象しかなかった。だが取材などを通じ「戦時中の人とひとくくりにできない。それぞれの生き方や思いがあった。その記憶のバトンを受け継ぎ、伝えなくては」と気付いた。
佐伯さんを芝居に誘い練習に熱を入れた。佐伯さんも軽音楽の同好会と変わらぬ熱心さを見せた。だが役者が二人になると、一人芝居でできた自然な演技ができない。会話のテンポや表情が不自然になり、公演直前でも満足のいく演技ができない。中村さんは「私が相手を気遣えないからだ」と悩んだ。
伊三野さんは、「中村は教えたことを完璧にこなす。それだけではロボットだ。自分の芝居を見せてほしい」と厳しく指導する。同好会でドラム担当の佐伯さんは「バンドは、息が合えば、いい演奏ができるし楽しい。芝居も同じじゃないかな」と助言。中村さんは「自分も楽しまないと、いい芝居はできない。楽しめば会話も自然になる」と佐伯さんと努力を続けている。
公演は二十日に始まる県高校演劇研究中央発表会の前の力試し。入場無料、午前十時半開演(十時開場)。問い合わせは同校伊三野教諭=電0476(27)2610=へ。