臨時国会要求 憲法の定め軽視するな - 東京新聞(2015年10月22日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015102202000144.html

野党五党などが臨時国会を召集するよう要求した。憲法の規定に基づく手続きである。政府・与党は重く受け止め、速やかに召集に応じるべきだ。憲法をこれ以上、軽視することは許されない。
通常国会閉会から一カ月近く。この間、安全保障法が公布され、環太平洋連携協定(TPP)締結交渉が関係国間で大筋合意した。安倍晋三首相は内閣改造を行い、十人の閣僚が新たに入閣した。
政府・与党は進んで臨時国会を召集して、首相と各閣僚が安保法やTPPについて報告し、改造内閣が何を目指すのか、説明を要する状況だ。これまでほとんどの内閣が、野党の要求に応じて臨時国会を召集し、説明する責任を果たしてきた。
ところが、安倍内閣は召集要求に応じない意向だという。首相の外交日程や二〇一六年度予算案の編成作業などを理由に挙げるが、野党側の追及を避けたいというのが本音ではないのか。
集団的自衛権の行使を容認し、憲法違反と指摘される安保法は成立後の世論調査でも国民の七割以上が説明不足と答えている。憲法解釈変更をめぐる内閣法制局内部での検討の経緯が公文書に残されていない問題も新たに浮上した。
引き続き議論が必要な法律だ。成立を幕引きにしてはならない。
TPPの合意内容も、農業重要五項目を関税撤廃の例外とするよう求めた国会決議に沿うのか、日本の産業構造がどう変わるのか、国会での説明と検証が必要だ。
新閣僚には「政治とカネ」の問題が浮上した。森山裕農相と馳浩文部科学相は代表を務める自民党支部が業者から不適切な献金を受け、島尻安伊子沖縄北方担当相は自身の名前と顔写真入りのカレンダーを選挙区内で配っていた。
いずれも国会での追及に値する問題だ。召集を拒み続ければ、追及逃れと疑われても仕方がない。
憲法五三条は衆参どちらかで四分の一以上の要求があれば、内閣は臨時国会の召集を決定しなければならないと明記するが、期限は定めておらず、政府は過去二回、要求に応じなかった。
しかし、野党の要求は憲法に基づく重いものだ。前例を口実に要求を拒み、憲法の規定を軽視する愚を再び犯してはならない。
集団的自衛権の行使を違憲とする歴代内閣の憲法解釈を一内閣の判断で変更した安倍政権である。憲法順守の姿勢に強い疑念が持たれていることを、あらためて肝に銘じるべきであろう。