戦争の意味を考える機会に 故井上ひさしさんの戯曲上演 - 東京新聞(2015年10月8日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201510/CK2015100802000159.html
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港区を中心に活動するアマチュア劇団「演劇集団 土くれ」が八日から、原爆投下直前の広島を舞台にした故・井上ひさしさんの戯曲「紙屋町さくらホテル」を区内で上演する。劇団には、先月成立した安全保障関連法の国会前での反対行動に参加したメンバーもいる。戦後七十年の節目に「大切な人の命や縁を絶ってしまう戦争の意味を考える機会にしてほしい」と願っている。 (杉戸祐子)
「紙屋町さくらホテル」は、広島で被爆した移動演劇隊をモチーフにした物語。さくらホテルの女主人や宿泊客、軍人、特高警察の刑事らが演劇隊に巻き込まれるストーリーの傍らで、戦争責任や演劇論が織り込まれている。「土くれ」代表で演出を担う税理士石塚幹雄さん(69)は「七十年前が舞台だが、若い世代にも井上さんのメッセージは伝わるはず」と語る。
土くれは一九六七年、東京国税局の職員らが労働組合の文化祭をきっかけに結成。他業種の仲間も迎え、十五人ほどの中心メンバーを軸に年一、二回の公演を重ね、今回が六十四回目。これまでも井上作品を上演しており、魅力を「悪役でも心の底に相手を思う気持ちを持っていることが大切に描かれている」と、舞台監督・美術担当の税理士本川国雄さん(68)は語る。
安全保障関連法に不安を感じるという石塚さんは「作品では声高に反戦を叫ぶわけではないが、舞台を見て笑ったり泣いたりするうちに戦争はいけないと思ってもらえたら」と期待する。本川さんは「たくさんの奇跡の中で生まれてくる人の命を絶ってしまうのが戦争」と話す。
会場は港区六本木の麻布区民センターホール。残席のある公演は八日午後六時半、九日午後二時、六時半、十日午後六時(いずれも開演時間)。全席自由。前売り二千円、当日二千五百円、中学生以下千円。麻布区民センターなどとの共催で港区在勤、在学、在住者は無料。問い合わせは土くれ事務局=電090(9200)9025=へ。