内閣改造 目先を変えるだけでは - 東京新聞(2015年10月8日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015100802000133.html
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安倍晋三首相が内閣を改造した。来夏の参院選に向けて、安全保障法制成立を最優先したこれまでの態勢からの転換を印象づけようとしたのだろう。目先を変えるだけでは国民の支持は得られまい。
第三次安倍改造内閣の発足である。九月の自民党総裁選で、無投票で再選されたことを受けた新体制の船出だ。来年夏には参院選が控えており、このまま選挙戦に臨む可能性が高い顔触れでもある。
首相は内閣改造の狙いを「一億総活躍という輝かしい未来を切り開くため新しい挑戦を始める」と説明した。
しかし、集団的自衛権の行使容認という、憲法を改正すべき重要な政策転換を、閣議決定で行った政権だ。関連法が成立し、閣僚の顔触れが変わったからといって、不問に付すわけにはいかない。
臨時国会を速やかに召集し、首相は所信を明らかにして野党との論戦に臨むべきだ。臨時国会見送り論もあるというが、論外だ。
党内各派閥からまんべんなく起用する挙党態勢の中、「目玉ポスト」として新設されたのが、首相側近の加藤勝信官房副長官を充てた一億総活躍担当相である。
少子高齢化に歯止めをかけて、誰もが能力を発揮できる社会を目指す首相の意向を反映したものだが、何をするのか具体性を欠き、担当分野もほかの閣僚と重なる。
参院選を意識して、言葉が躍るだけでは意味がないどころか、安保問題から国民の目をそらす意図があるのなら、有害ですらある。
河野太郎氏を行政改革担当相に起用したことにも注目したい。
党行革推進本部長としての手腕を買われての起用だが、政府のエネルギー基本計画を批判するなど政権の原発推進政策とは相いれない面もある。閣内への取り込みで批判封じを図ったのだろうか。
首相官邸の意向には逆らいづらい首相「一強」の状況であるからこそ、河野氏には信念を曲げず、正しいと思ったことを直言する気概を見せてほしい。
米軍普天間飛行場の返還問題を抱える沖縄・北方担当相には、沖縄県選挙区選出の島尻安伊子参院議員が就いた。名護市辺野古への「県内移設」には翁長雄志県知事をはじめ多くの県民が反対する。
せっかくの機会だ。この際、県民の声を、積極的に政策に反映する役割を果たしたらどうか。民意を無視して、沖縄に米軍基地を押し付ける側に回るのなら、初入閣の意義も損なわれてしまう。