(天声人語)ユーモアを愛する人なのだろう。元最高裁判事の浜田邦夫さんの発言 - (2015年9月16日)

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ユーモアを愛する人なのだろう。元最高裁判事の浜田邦夫さんの発言はなかなか魅力的だった。与野党の政治家に「知性と品性と理性」を尊重するよう呼びかけた。「少なくとも見せかけだけでも」と。
安保関連法案に関する参院の中央公聴会が、きのう開かれた。その公述人の一人が浜田さんだ。集団的自衛権の行使は合憲だとする安倍政権の解釈変更を、「法匪(ほうひ)」という言葉を引き合いに批判した。法を悪用する者と辞書にある。
首相は、法案への国民の支持が広がっていなくても今国会で成立させるとしている。浜田さんはこの状況で採決を強行すれば日本の国際的信用にかかわると訴えた。だからこそ、知性と品性と理性を、なのだろう。
高齢の浜田さんとは対照的な若い公述人も登場した。大学生の奥田愛基(あき)さん。法案に反対する学生らのグループ「SEALDs(シールズ)」の中心メンバーである。国会前での彼らの抗議活動には幅広い世代が参加し、盛り上がりを見せる。
奥田さんは繰り返し語った。自分たちは「一人ひとりの個人」として考え、声を上げている――。どこかの政治団体に属するでもなく、誰かに動員されるでもない。一人の主権者として当たり前のことをしているのだという言葉がすがすがしい。
選良の重責に敬意を表しつつ、奥田さんは議員に求めた。「どうか、たった一人の個であって下さい」。この法案を前に孤独に思考し、判断してほしい。浜田さんが知性や理性を求めたのと響き合うメッセージである。