18歳選挙権 良質な主権者教育を - 東京新聞(2015年6月19日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015061902000179.html
http://megalodon.jp/2015-0619-1014-45/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015061902000179.html

十八歳から選挙権が持てる改正公職選挙法が成立した。若者の意見がより政治に反映されるのは望ましい。主権者として一票を投じるために、いかに良質な教育がなされるかが成功の鍵となろう。
選挙権年齢を「十八歳以上」としたことで、新たに約二百四十万人が有権者に加わる。この改正は実に七十年ぶりであり、日本政治の大きな節目となる。
国立国会図書館が世界の状況を調べたことがある。百九十八カ国・地域のうち、選挙年齢の下限を十八歳としている国は、百六十七にものぼった。国際的にみても「二十歳以上」としてきた日本は少数派に属していたわけだ。
来年夏の参院選から適用されるのはほぼ確実で、その後、地方選挙などでも順次導入される。人口減社会となり、少子高齢化が進む中で、将来を担う若者たちが政治に参加する意義は大きい。
懸念されるのが、現在、若い世代の政治への無関心や低迷する投票率だ。選挙権年齢を引き下げたからといって投票率が向上する保証はどこにもない。鍵となるのは、いかに良質な「主権者教育」がなされるかである。
一票を投じる主権者の一人として、国家レベル、社会・地域レベルの課題に対して、自ら考え、判断し、行動していくための教育である。しかし、現実にはことさら「政治的中立性」を強調するために、教育行政が現場の教員を萎縮させているのではないか。
教育基本法には「良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない」との定めがある。政治的教養は不可欠なのだ。安易な「模擬投票」程度では到底、その教養は深められない。国の最高法規である日本国憲法への理解を深めることや、その根本思想である立憲主義などについても取り上げられるべきだ。
そうしないと、憲法改正や安全保障などの問題などに対して、適切な判断はできないだろう。もともと今回の改正は憲法改正の手続きを定めた国民投票法を踏まえている。
特定の政党に肩入れする教育はもちろん排除せねばならないが、政治的教養をつけることは中核的なテーマであるはずだ。
それに基づいて、各政党のマニフェストへの批判精神が生まれ、多様な考えも生まれよう。若者が希望の持てる政治をつくる。若い政治家を育てる。高い意識を持って政治に参加する−。そんな機運が高まることを期待する。