オスプレイ配備 住民の反対なぜ顧みぬ - 東京新聞(2015年5月13日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015051302000140.html
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有無を言わさず、米軍基地負担を強いるのは、沖縄でも首都圏でも政府の常とう手段だ。米軍の垂直離着陸輸送機オスプレイ横田基地に配備される。地元の反対となぜ向き合おうとしないのか。
報道で明らかになったわずか三日後だった。日米両政府がきのう米空軍のCV22オスプレイを、米軍横田基地(東京都福生市など)に配備すると正式に発表した。
二〇一七年後半に三機、二一年までに七機を追加して計十機態勢にするという。沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場には海兵隊仕様のMV22が二十四機配備されているが、本土配備は初めてだ。
オスプレイはヘリコプターの垂直離着陸機能と固定翼機並みの速度で飛行できる機能を併せ持つ。しかし、その特殊な機能から、開発段階で四回の墜落事故を起こして三十人が死亡。実戦配備後も事故が続き、安全性への懸念が払拭(ふっしょく)されたとは言い難いのが現状だ。
政府から配備内容を説明された加藤育男・福生市長は「これ以上の基地負担は受け入れられない。市民が大変、不安がる。無理な話だ」などと配備反対を表明した。
沖縄では大きな事故は起きていないが、部品の落下事故や、日米合意に反する夜間や人口密集地上空での飛行が頻繁にある。
特殊作戦にも使われるCV22は夜間や低空の飛行など過酷な条件下での運用が多く、十万時間当たりの事故率はMV22の約三倍に上るという。横田基地周辺の首長が配備に反対するのも当然だ。
普天間配備は、多くの沖縄県民が反対する中、一二年十月から強行された。横田配備も米国防総省からの通達を盾に押し切るつもりなのだろう。「日本政府」といいながら日本国民と米軍の、どちらに向いて仕事をしているのか。
CV22は当初、沖縄県の米空軍嘉手納基地(嘉手納町など)への配備が検討されたが、沖縄の負担軽減のため、在日米軍司令部がある横田への配備が決まったという。
一般論としては、在日米軍基地の約74%が集中する沖縄の過重な基地負担は、日本国民ができる限り等しく分担することが望ましい。しかし、安全性に懸念が残るオスプレイの配備、訓練分散は危険の拡散でしかない。
政府がなすべきは、地元自治体の説得ではなく、オスプレイ部隊の国外移転を米側に提起し、沖縄県民を含む日本国民の不安を取り除くことではないのか。住民に失望を与えては、安倍晋三首相が言う「希望の同盟」には程遠い。