へいわのうた 9条を描き出す人たち(4)「憲法カフェ」開催に力:神奈川 - 東京新聞(2015年5月6日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/20150506/CK2015050602000153.html
http://megalodon.jp/2015-0507-0932-21/www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/20150506/CK2015050602000153.html

◆弁護士・武井 由起子さん(川崎市高津区
川崎市高津区在住の弁護士武井由起子さん(47)は、少人数で憲法について学ぶ「憲法カフェ」の開催に力を入れている。「憲法が変えられようとしている危機を知らせたい」と武井さん。平和憲法が直面する諸問題をいかに多くの人に伝えるか、模索を続ける。
憲法カフェは、参加者がお茶を飲んだりしながら憲法の基礎知識や、九条を変えようとする今の政治の動きなどを学ぶ。ざっくばらんな雰囲気が人気だ。
自民党が二〇一二年、国防軍創設などを盛り込んだ憲法改正案を公表。危機感を持った弁護士たちが一三年につくった全国組織「明日の自由を守る若手弁護士の会」(約四百人)が憲法カフェの開催に精力的に動いている。中でも武井さんは昨年一年だけで講師を四十回務めた。
四月十九日、子どもを描き続けた画家いわさきちひろさん(一九一八〜七四年)の美術館(東京都練馬区)で開かれた憲法カフェには、ちひろファンとみられる赤ちゃんを抱えた母親ら約七十人が参加した。武井さんは、わがままな王様が憲法で縛られる様子を描いた弁護士の会のオリジナル紙芝居を、ちひろさんの孫の松本麻野(まや)さん(34)と披露した。
武井さんは、憲法一三条「すべて国民は個人として尊重される」が大事と強調。詩人金子みすゞ(〇三〜三〇年)の作品「私と小鳥とすずと」のフレーズ「みんなちがって、みんないい」にも触れた。参加者は、ちひろさんの作品「草むらの小鳥と少女」に思いをはせたようだ。
ちひろさんがベトナム戦争に、先の大戦も重ねて描いた絵本も取り上げた。武井さんは「表現の自由がある憲法のもとだから、ちひろさんも自分らしく生きられた」。参加したある母親は「ちひろさんに絡めて話してくれて、分かりやすかった。憲法は法律のように私たちを縛るものと誤解していた」
武井さんは憲法カフェで毎回、資料(A4判二十五ページ)を、参加者が再び使ってくれることを願いながら配る。集団的自衛権などが説明されており、今回参加した母親の一人が「この資料を使って友達に話してみたい」と言ってくれたのがうれしかった。
武井さんは大学を卒業後、十年以上、商社で働いたが、大学院で学び直し、弁護士に転身。「弁護士が裁判で頑張ると、新制度が生まれるなど世の中が良くなる」と考えたからだ。憲法についてはFMラジオ番組で解説したり、ワインやヨガの愛好者の集いで講演したりと活動範囲を広げ、憲法カフェの新たなスタイルを模索する。「ビジネスの世界は商品や事業の魅力を相手に伝えてなんぼ」と、厳しい競争社会で働いてきた者らしく言い切る。
「初めて憲法を考える人に『押しつけ』と受け止められないようにしたい。ちひろさんの絵が心にすっと入っていくのに学びたい」。チャレンジの毎日だ。
 (山本哲正)