“日本一危険”な川内原発 鹿児島地裁が「再稼働差し止め」却下 -日刊ゲンダイ(2015年4月22日)

http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/159248
http://megalodon.jp/2015-0423-1053-22/www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/159248

絶望的な判断が下された。九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)は安全性が不十分だとして、住民らが再稼働差し止めを求めた仮処分申請で、鹿児島地裁(前田郁勝裁判長)は22日午前、「原発の新規制基準は不合理とまでは言えない」と判断した。住民側は不服として高裁に抗告する方針を示している。
争点は「地震対策」や「火山(被害)の危険性」などで、住民側は耐震設計の目安となる地震の揺れ(基準地震動)が「過去の地震の平均値に基づいているだけで根拠が不十分」と指摘し、「大地震では対応できない」と主張。これに対し、九電側は「基準地震動を超えた地震でも影響はない」と反論していた。
福井地裁に続き、鹿児島地裁でも「再稼働認めず」との司法判断が示されれば、全国の「脱原発訴訟」に“飛び火”するとみられ、注目されていた。ところが、下されたのは司法判断を逆戻りさせるような判決だった。
川内原発の取材を続けているジャーナリストの志葉玲氏が言う。
川内原発は“日本一危険な原発”といわれています。火山学者が『この土地に建てたこと自体、大間違い』と指摘するほどで、周辺には、大規模噴火リスクを抱える火山が複数ある。地震の揺れはもちろん、火山噴火で火砕流原発に到達する危険性や避難経路の確保はどうするのか。大噴火が起きれば、燃料棒を運び出す時間はありません。過去の噴火記録では、北海道まで灰が飛んでいます。つまり、全国に放射能がまき散らされる可能性があるのです。地裁はこれらのリスクを鑑みて判決を下したのか、疑問です」
原発の規制基準は、半径160キロ圏内の火山の危険性を検討対象にしているが、川内原発の周辺には巨大噴火の痕跡を残すカルデラが5つもある。
「判決の判断の理由書に目を通し、地裁は九電や原子力規制委員会の言い分をなぞっている印象を受けました。そもそも、原子力規制委員会の作成した『火山影響評価ガイド』の審理には、火山学者をほとんど入れていません。その内容を地裁は、うのみにしているのです。カルデラ噴火について、かなりの数の火山学者が懸念を表明しているにもかかわらず、意見は聞き入れませんでした。福島原発事故を経験してなお、市民らの声が反映されないのは残念です」(FoE Japanの満田夏花氏)
原子力規制委員会は川内1、2号機について、地震津波の想定や重大事故対策などが「新規制基準を満たす」と判断し、1号機は審査中の原発で唯一、再稼働に向けた最終段階の使用前検査が進んでいる。九電は7月にも再稼働を見込んでいる。