福井地裁はなぜ高浜原発を止めたのか(地震の話を中心に)(渡辺輝人さん) - Y!ニュース(2015年4月16日)

http://bylines.news.yahoo.co.jp/watanabeteruhito/20150416-00044872/
http://megalodon.jp/2015-0418-0951-53/bylines.news.yahoo.co.jp/watanabeteruhito/20150416-00044872/

高浜原発3,4号機運転差止仮処分命令申立事件(裁判年月日 平成27年4月14日)
福井地方裁判所  民事第2部
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=85038&hc_location=ufi

判示事項の要旨
高浜原発から半径250キロメートル圏内に居住する債権者らが,人格権の妨害予防請求権に基づいて高浜原発3,4号機の運転差止めを求めた仮処分請求につき,高浜原発の安全施設,安全技術には多方面にわたる脆弱性があるといわざるを得ず,原子炉の運転差止めは具体的危険性を大幅に軽減する適切で有効な手段であり,原発事故によって債権者らは取り返しのつかない損害を被るおそれが生じ,本案訴訟の結論を待つ余裕がなく,また,原子力規制委員会による再稼働申請の許可がなされた現時点においては,保全の必要性はこれを肯定できるとして,運転差止めを認容した事例

全文
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/038/085038_hanrei.pdf

しかし、3.11のあと、この最高裁判決が示した見地(特に赤字下線部分)は、特別な意味を持つようになってきました。「万が一」にも起きてはならない(そして起こらない)はずの重大な事故が実際に起きてしまったからです。当然、この事故を受けて新たに設置された原子力規制委員会が作るべき「新規制基準」は、重大な事故を「万が一」にも起こさないようなものでなければならないのです。
福井地裁は、この最高裁判決がいう、重大な事故は「万が一」にも起きてはならない、という価値観と、チェルノブイリ事故、福島第一原発の事故を前提にした上で論を進めています。


福井地裁は何が不合理だと言ったのか
福井地裁の決定文は色々なことを言っているのですが、原子力規制委員会が定めた新規制基準については以下の不合理性を指摘しています。

  • 万一の事故に備えなければならない原子力発電所の基準地震動を地震の平均像を基に策定することに合理性は見い出し難い(p30)
  • 免震重要棟の設置について猶予期間が設けられていることに合理性がない(p44)

とくに、前者が重要な問題として取り上げられています。

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実際、あまり報道されていませんが、平成19年の新潟県中越沖地震では、柏崎刈羽原発では、想定を遙かに超える地震動が発生し、3号機で火災が起こるとともに、その後、2、3、4号機の原子炉は、平成23年に東日本大震災が起こるまで、ついに一度も動かすことができませんでした。地震によって深刻なダメージを受けたと言われています。国民がちゃんと知らされていないだけで、3.11の前から、日本の原発地震でヤバイ状態になっていたのです。また、東日本大震災で、福島第一原発の事故が起こったことはあまりに有名ですね。この際も基準地震動を超える地震動が観測されていたのです。

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驚くべきことに、関西電力は、原発の主給水ポンプや外部電源(送電線)について地震で壊れてもしょうがない(主給水ポンプについてp37、外部電源についてp41)という立場に立っています。これらの設備を強い地震に耐えられるようにすることは技術的に難しいことはありませんが、単にコストが高すぎるのでやらないものと思われます。しかし、原発の「本来の姿」について、壊れてもしょうがないけど非常時のバックアップがあるから大丈夫というのは、現に福島で失敗している非常時のバックアップの不確実性からしても、非常に危うい考え方といえるでしょう。決定文は「理解に苦しむ」(p37)など、非常に強いトーンで批判しています。