全教科書に竹島・尖閣 中学社会科 初の「政府見解尊重」検定-東京新聞(2015年4月7日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015040702000146.html
http://megalodon.jp/2015-0407-0931-39/www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2015040702000146.html

◆政権の意向、色濃く
教科書作りに大きく影響する学習指導要領の次回改定を待たず、安倍政権は検定基準と学習指導要領解説書を個別に見直すという異例の手段を使ってまで、教育への統制を強めた。
これらの改定で安倍政権は、領土や歴史認識の問題で政府の立場を教えるよう求めた。押しつけは、それだけではない。
安倍首相は第一次政権時に教育基本法を改正し、「愛国心」養成を教育目標に盛り込んだ。今回の検定では「教育基本法に照らし重大な欠陥がない」よう合格基準を厳格化。結果、国旗・国歌などの記述が目立つ一方、旧日本軍による残虐行為や中韓などから見た領土や戦争の記述は抑えられた。
教科書会社は「変化が急すぎる」といぶかしがる。しかし、結果的に多くの教科書が政権の意向を強く反映した内容になったのは、合格という実利を優先したためだ。社会科の各教科書は「竹島尖閣諸島は日本固有の領土」「南京事件の犠牲者の数は諸説ある」といった横並びの表現であふれた。
ただ、政府の見解を前面に押し出すことが、安倍政権の目指す「バランス良い教育」と言えるだろうか。領土問題でいえば、来春から新しい教科書で学ぶ中学生のほとんどは三年間ずっと、竹島尖閣諸島について政府の言い分のみを刷り込まれることになる。
小中での道徳の教科化など、「教育再生」に向けた変化が急ピッチで進む。しかし、子どものためにあるはずの教育が、政権の意向を喧伝(けんでん)する道具になってはいないか。疑問が残る。(沢田敦)
教科書検定 教科書会社が編集した原稿段階の教科書の記述を文部科学省が審査する制度。(1)学習指導要領に則しているか(2)範囲や表現は検定基準に基づいて適切か−などを教科書検定審議会に諮って審査し、合格しないと教科書として認められない。