ドイツのテレビが映し出す「原発セールスマン」の醜さ(志村建世さん)-BLOGOS(2015年3月16日)

http://blogos.com/outline/107910/

想田和弘氏のツイッターから辿ってZDF(ドイツ第二公共放送)のテレビ番組「原子力エネルギーのカムバック(逆襲)」を見ました。27分ほどの長さで、以下のユーチューブで見られます。

この番組の冒頭に登場するのが、日本の安倍総理です。福島の原発事故から4年、一度は世界に助けを求めたのに、今は自信満々で原発のセールスマンとして世界を飛び回っています。ついにトルコでは念願の契約に成功しました。地震国なのに、日本の技術なら大丈夫と信用させたのでしょうか。もちろん日本の大手メーカーは大きな恩恵を受けます。

トルコの住民の間にも、原発への不安はあり、反対運動もあります。お膝元の日本では、脱原発テント村の活動風景も紹介されます。それでも原発からの決別は、世界の本流にはなりません。EUの中にも「原子力ロビー」は健在で、EUの基本方針として「原子力の利用」は今も生き残っているのです。

ドイツはメルケル首相の決断で原発廃止を決めたのですが、それが容易でないこともわかってきました。廃炉費用は、各電力会社が積立金で賄うよう義務づけられていたのですが、廃炉費用の算定の難しさから、電力会社は原発の会計を分離する対策をとり始めました。原発会計が破綻すれば、結局は国が破綻処理に巻き込まれる可能性が出てきているのです。

オンカロと呼ばれる最終処分場を用意し、10万年後にも備えている優等生と思われていたフィンランドの事情も、順調ではありません。オンカロの地層も、塩水の浸透などで絶対安全ではないことがわかってきたということです。つまりは原発の先行きについての明るいニュースは何一つないのに、原子力エネルギー利用の惰性だけは止まらない勢いなのです。日本では「原子力村」、世界では「原子力ロビー」と呼ばれる勢力は、核戦略とも連動して、支配力を手放そうとしません。

しかし科学者は警告します。どの角度から見ても、原子力発電は未来のない産業です。彼らが言うように、事故を起こさずにすべて思惑通りに動いてくれたとしても、そうなのです。私も最近国内のネットで似たような論説を読みました。深刻な原発の事故は、たぶんもう繰り返さないだろう。それでもダメなものはダメなのだと。

想田和弘氏もツイッターで「人間って愚かな生き物だなあと、つくづく思う。」と書いています。その愚かさを代表している顔が、今の日本の総理大臣なのでした。原発と武器とを世界に向けて売り出しいるセールスマンは、「ODAを外国の軍への『非軍的支援』にも使う」という、不思議な日本語まで使うようになりました。セールスマンはノルマが第一なのでしょう。