昨年の参院選「違憲状態」 最高裁判決-中日新聞2014年11月27日)

http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2014112702000061.html
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◆「次は違憲」改革迫る
<解説>
参院選一票の格差訴訟の最高裁判決は前回判決に続き「違憲状態」の警告を国会に示した。二〇一六年選挙までに抜本的な是正に取り組むことを前提に国会の裁量を尊重はしたが、約束が果たされなければ次は違憲判決、という最後通告に近い厳しい判断だ。

参院は三年ごとに半数を改選する仕組みで、有権者が少ない選挙区にも最低二議席を割り当てなければならず、格差が縮まりにくいという特有の事情がある。このため衆院より寛容な「五倍程度の格差なら合憲」との見方が国会に浸透し、司法もこれを容認してきた。

しかし近年は衆参のねじれで参院の役割が重くなる事態もあり、司法が投票価値の平等をより厳格に捉える傾向にある。「五倍なら合憲」とみられていた判決相場は変わり、五・〇〇倍の一〇年選挙も、四・七七倍の一三年選挙も憲法違反の不平等選挙と判断された。

衆院参院がいずれも「違憲状態」という異常な国会で、抜本改革に向けた議論は一向に進まない。今回、十五裁判官中の一人とはいえ、初めて「無効」の意見表明があったことは、司法の忍耐が限界を超えつつあることを端的に示している。

最高裁が、司法と立法府の関係を配慮したぎりぎりの表現で選挙制度改革を求めているのは明白だ。二年後の参院選までに都道府県単位を基本とする選挙区割りを変えられるか。重い課題が突き付けられた。
(共同・川上宏)

参院選 「一票の格差」> 議員1人当たりの有権者数が選挙区ごとに異なるため、一票の価値に格差が生じる問題。衆議院に比べて参議院は定数が少なく、3年ごとの半数改選のため各選挙区の定数は必ず偶数になり、格差が拡大しやすい。訴訟では、法の下の平等を定めた憲法に違反する著しい不平等が生じている場合は「違憲状態」、さらに格差是正に必要な期間が過ぎ国会の裁量権の限界を超えていれば「違憲」、選挙をやり直しても公益を著しく害さないと判断すれば「無効」の判決になる。