<金口木舌>スコットランドの熱い炎 - 琉球新報(2014年9月19日)

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「政府の言うことは国益ばっかりだ」。地元の声を聞かず、豊かな資源を搾取する。民意を無視して強制的に合併する−。スコットランドのことではない。井上ひさし著『吉里吉里人』が描く、東北のある村が独立する痛快小説だ

日本に愛想を尽かした「吉里吉里国」はズーズー弁復権や弱者重視の政策、他国の尊敬を集め紛争を避ける「文化武装」など、独自の国造りを進める。中央集権に皮肉と風刺を込めた作品だ。

スコットランドの独立の是非を問う住民投票は、きょう午後に結果が判明する。1707年の併合以降、イングランドウェールズが嫌がる核基地を置かれたり、サッチャー政権時代には「人頭税」が先行導入されたりと、住民の間には不公平感が根強い。

中央政府から不平等な扱いを受け、自治意識の高まっている地域は地球上に数ある。スペインのバスク、ベルギーのフランドル、カナダのケベック…。スペインのカタルーニャは来月の独立住民投票に向けて動く。

自己決定権を求めるスコットランドの熱い炎は、各地にどう飛び火するのだろう。政府の強権政治の勢いが増す沖縄では、「独立論」が居酒屋から飛び出し、学会の段階まで進んだ。

卒業式や閉店時に流れる「蛍の光」はスコットランドの民謡。連合王国とお別れして独自の道を歩むのか否か。かの地の決断を固唾(かたず)をのんで見守りたい。