http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/544887.html
http://megalodon.jp/2014-0612-1414-48/www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/544887.html
今国会初となる党首討論がきのう開かれた。
安倍晋三首相は集団的自衛権について、限定的行使は憲法の枠内で可能だとする持論を展開した。
憲法が国民に保障する平和的生存権や幸福追求権を守るために自衛権があり、「必要最小限」の歯止めは個別的自衛権と同様、集団的自衛権にもかかるという。
これは過去の政府見解から都合のいい部分だけを抜き出した主張だ。国民の目を欺くものと言わざるを得ない。首相には異論にも謙虚に耳を傾けるよう求めたい。
根拠は「自国の存立を全うするために必要な自衛の措置」を認めた1972年の政府見解だ。「自衛の措置」には集団的自衛権の行使も含まれ得るとの解釈である。
しかし、この政府見解は「他国に加えられた武力攻撃を阻止する集団的自衛権は憲法上許されない」と明言している。「許される」との主張とは正反対の結論だ。
政府が長年堅持してきた憲法解釈を詭弁(きべん)ですり抜けようとする態度は、国民に対して不誠実である。
国会軽視の姿勢も見過ごせない。民主党の海江田万里代表は「なぜ憲法改正の手続きを取らないのか」「戦闘中の機雷除去では中東の原油のために自衛隊員が犠牲にならないか」などとただした。
首相は解釈改憲を目指す理由には言及せず、機雷については「敷設は国際法に反するが、排除は国際法上合法だ」とピント外れの回答で、議論はかみ合わなかった。意図的な争点外しと言える。
一方で首相は南シナ海の不安定な状況などを挙げ「目の前で起きていることに誠実に向き合ってほしい」と民主党批判を展開した。
確かに民主党内の議論は迷走気味で、海江田代表の指導力も問われている。立て直しが急務である。だからといって安倍政権の独走が正当化されるわけではない。
質問に立った日本維新の会の石原慎太郎共同代表は、政府の姿勢を追及せず、持ち時間のほとんどを自説の披露に費やした。みんなの党の浅尾慶一郎代表は集団的自衛権に関する質問をしなかった。 これでは政府・自民党を後押しするだけである。野党として政権を監視する責任感が足りない。
党首討論が5カ月にわたる会期中にわずか1回というのも問題だ。重要な政治課題に対して国会の責任を果たすため、与党は開催に積極的に応じるべきだ。