教科書無償法改正案 地方と教育への露骨な介入 - 琉球新報(2014年3月28日)

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八重山教科書問題で、安倍政権による地方と教育への圧力が強まっている。教科書無償措置法の改正案が衆院を通過した。

改正案は、採択地区協議会の協議結果に基づき同じ教科書を使うよう義務付ける内容であり、竹富町教育委員会育鵬社版の中学校公民教科書を押し付ける意図があることは明らかだ。地方の小さな自治体を狙い撃ちしたかのような恣意(しい)的な法改正は、将来に大きな禍根を残す。権力による教育への露骨な介入であり、断じて許されない。

改正案は採択地区内での協議会設置を義務付け「教委は協議の結果に基づき、同一の教科書を採択しなければならない」と規定する。

一方で、地方教育行政法は各市町村に採択権限があると定める。下村博文文部科学相は「無償措置法の規定が優先されるため、(町教委は)違法だ」とするが、法改正の手続きを急ぐことは、現行の法体系の瑕疵(かし)を国が自ら認めているからにほかならない。

法の瑕疵を認めつつ、町教委の違法性を主張するのは驚きの一語に尽きる。下村氏は自らの矛盾に気付かないのだろうか。

しかも26日の衆院文部科学委員会では、民主党政権時代に閣議決定された「竹富町が自ら教科書を購入して生徒に無償で給与することは無償措置法でも禁止されるものではない」とする答弁書の効力は安倍政権下でも続いていると、内閣法制局が明らかにした。

竹富町の配布行為が合法であることを証明している。それでいて、下村氏が町教委を違法だとあげつらうのは論理的に明らかに破綻している。

一方、改正案は、採択地区の設定単位を、現行の「市郡」から「市町村」に変更することを盛り込んだ。全国規模では、育鵬社など保守色の強い教科書を採択しやすくするための環境整備の狙いも見え隠れする。そうでありながら、八重山の3市町は一体とするのは、国のご都合主義以外の何物でもない。

文科省初等中等教育局長は是正要求について「政権交代後、より強い指導を行うようになったのは事実」と政治介入があったことを示唆した。国に従わない地方を政治家が力で屈服させようとしていることがはっきりした。安倍政権の姿勢は教育の民主化地方分権にも明らかに逆行する。竹富町への是正要求を直ちに撤回すべきだ。