おごれる者は久しからず:私説・論説室から-東京新聞(2013年12月11日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2013121102000127.html

過酷事故の後始末もできないのに「原発再稼働」を目指す。公約違反の「TPP交渉参加」を決める。バラマキもやめないで「消費税増税」する。民主主義を壊しかねない「特定秘密保護法」を強引につくる…。

「民意」の多くに反する重大事案をさも平然と決めていく。安倍政権は国政選挙さえ勝てば「やりたい放題」の免罪符を得ると勘違いしているのではないか。

もっとも、「民意」と政権との大きなズレは選挙結果で分かっていたことだ。一年前の総選挙で自民党は大勝したが、それは低投票率小選挙区制の特性のおかげだった。全有権者でみれば自民の得票率は小選挙区で24%、比例代表はわずか15%。四分の一以下の「民意」しか得ていない。

ナチスの手口を学んだらどうか」「デモはテロ」という政権である。以前、この欄で触れた寓話(ぐうわ)『茶色の朝』の世界に、いよいよ近づいたと感じる。ファシズムの怖さを原体験に持つ作者パブロフ氏は言った。

「民主主義は壊れやすい花瓶と同じ。小さなひびを放っておくと、いつの間にか割れてしまう」。氏は多くの人に伝えたいと印税を放棄し、寓話の原書は一ユーロ(約百四十円)で販売された。フランスでは学校教材としても広く読まれた。

道徳を教科化するというなら、この国も教材に採用してはどうか。いや、「不都合な真実」を「秘密」にしておきたい政権には望むべくもないか。 (久原穏)