映画「いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち」公開中 シドニー・シビリア監督 - 東京新聞(2018年5月31日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/entertainment/news/CK2018053102000194.html
https://megalodon.jp/2018-0603-1001-06/www.tokyo-np.co.jp/article/entertainment/news/CK2018053102000194.html

財政難による研究費削減で大学を追われ、一発逆転を狙って法律すれすれのドラッグ製造に手を染めた研究者たちを面白おかしく描くイタリアのコメディー映画「いつだってやめられる 10人の怒(イカ)れる教授たち」が東京・渋谷のBunkamuraル・シネマで公開されている。2015年に東京と大阪で開かれたイタリア映画祭で上映された前作「−7人の危(アブ)ない教授たち」の続編。シドニー・シビリア監督(36)は「私たちが知性に敬意を払ってこなかったことへの贖罪(しょくざい)。たくさん笑ってね」と語る。 (猪飼なつみ)
シビリア監督は偶然読んだ新聞記事をヒントに、原案、脚本も手がけた。「哲学科を卒業した2人が、ごみ収集員の仕事をしながらカントの哲学を語っていたという内容でした。この逆説はコメディーになると思った」。ギリシャに端を発した09年の欧州危機以降、海外に転出せざるを得ない研究者も増え「国の頭脳流出」ともいわれた。
才能ある研究者たちが、生活費のために危険ドラッグを製造して、ギャングとのトラブルで犯罪者になる前作は世界中で大ヒット。「研究者からの反応も大きくて驚いた。でも、1作目は国内の不遇な研究者たちの話。海外の研究者たちに『頭脳流出の僕たちがいないじゃないか』と言われて。だから2作目に絶対入れようと思ったんです」と笑顔を見せる。
2作目ではリーダーのピエトロ(エドアルド・レオ)が国外の研究者たちも迎えに行き、前作の7人から10人に増える。
役者は専門用語を本物の専門家らしく滑らかに話す必要があった。「ぎくしゃくしていると、真実味がなくて笑えない。笑ってもらえたのは役者の苦労があったからこそ」。特に古典言語のスペシャリストで、ラテン語で会話する2人には、ラテン語の学校に通ってもらったという。
考古学や文化人類学の専門家など、一見どうチームに貢献するのか分からない登場人物たちが、突然活躍する姿も笑いを誘う。
例えば、考古学者はローマの地理に詳しいので、ワゴン車で遺跡を突っ切って追っ手から逃れる。そのシーンは、ローマ郊外の世界遺産ハドリアヌス帝の別荘」で撮影された。「本物の考古学者たちが1作目の大ファンだったおかげでロケが可能になった。撮影は20人くらいの考古学者が誇らしそうに見守った。傷つけないか心配そうでもあったけど」と笑う。
完結編となる3作目は今年のイタリア映画祭で上映されたが、今後の公開は未定。「熱くなる大フィナーレになっていますよ」と自信を見せる。1作目は6月23日からヒューマントラストシネマ有楽町で限定上映される。

週のはじめに考える 首脳会談で歴史を変える - 東京新聞(2018年6月3日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018060302000153.html
https://megalodon.jp/2018-0603-1002-21/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018060302000153.html

朝鮮半島の対立構図を、根本から変えることになるのでしょうか。ぎりぎりの調整が実を結び、史上初の米朝首脳会談が、十二日に開かれます。
シンガポールで、金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長とトランプ米大統領が会談する−。
ほんの一年前、北朝鮮の核実験や、弾道ミサイルの発射が相次ぎ、米国との間で戦争が起きるという見方さえありました。
その二つの国が、まさか首脳会談を行うと発表するなど、想像もできませんでした。
しかし会談への期待が高まったと思うと中止が発表され、また実現に向けた交渉が始まる。

◆読めない会談の行方
まるでジェットコースターのような展開でした。会談の行方は、二人の首脳に委ねられることになりましたが、結果はまだ予断を許しません。
最大の焦点は、核兵器の扱いです。米国は、短期間に北朝鮮の非核化を実現したい。
北朝鮮側は、時間をかけ、段階的に進めることや、北朝鮮を攻撃したり、現在の体制を崩壊させるような試みを行わないよう約束してほしいと伝えています。経済支援も要求しているようです。
まだ立場の違いが残っているため、「日程にこだわらず、事前の調整をしっかりやるべきだ」という専門家の指摘もありました。
しかし、世界の期待が高まっている今のタイミングを、双方とも逃したくなかったようです。

◆画期的な合意の数々
トップ同士が第三国で直接会い、対立を乗り越えて劇的な合意を実現したことが、過去に何回かあります。
複雑な歴史と利害がからむ中東が大きく動いたのは、一九九三年のことでした。
イスラエルガザ地区では、パレスチナ住民が、イスラエル軍に対して石を投げる抵抗運動を始めました。
イスラエル側は武力で対抗、パレスチナ側に千人以上の死者と数万人の負傷者が出ました。
子供も巻き込まれて犠牲になったことからノルウェーホルスト外相の仲介で、イスラエルパレスチナ解放機構(PLO)が、ノルウェーの首都オスロで、秘密交渉を進め、合意に達しました。
交渉場所にちなみ「オスロ合意」と呼ばれます。九三年九月にクリントン米大統領の仲介で、アラファトPLO議長と、ラビン・イスラエル首相がワシントンを訪問して握手し、合意が正式に調印されました。
イスラエルは、占領していたガザ、ヨルダン川西岸両地区から撤退し、代わりにパレスチナ自治を認める、という内容でした。
世界から歓迎されたこの合意は、残念ながら、現在は崩壊状態となっています。
八六年には米国とソ連の首脳会談が、アイスランドレイキャビクで行われました。
当時米ソ両国は、通告から数分以内に相手国に核ミサイルを撃ち込める緊張状況にありました。
一方で軍事費の負担も重くなっており、ゴルバチョフソ連共産党書記長が、レーガン米大統領軍縮会談を申し入れたのです。
二人は激しい議論の末、中距離核戦力(INF)の削減に合意します。この会談によって、第二次世界大戦後の国際社会を支配してきた「東西冷戦」の終わりが始まった、と評されました。
さらに八九年十二月には、地中海マルタ島沖に浮かぶ船の上で、ブッシュ米大統領(父)と、ゴルバチョフ氏が会談し、東西冷戦の終結を、正式に宣言しています。
ゴルバチョフ氏はこの時、「われわれは長く、平和に満ちた時代を歩き始めました。武力の脅威、不信、心理的イデオロギー的な闘争は過去のものになったのです」と発言しました。
それでは、朝鮮半島を考えてみましょう。
朝鮮戦争(一九五〇〜五三年)は、いまだに終わっていません。休戦のままです。

◆夢では終わらせない
トランプ氏は、十二日の会談で、まず「終戦宣言」を出すことを考えているようです。
非核化が最終段階に来た時、終戦宣言を土台に関係国が平和協定を結べば、戦争は終わります。
北朝鮮が求める体制の保証につながり、非核化も実現すると判断しているのかもしれません。この方法も試す価値はあります。
多くの人たちに苦しみをもたらし、将来も続くと思われていた朝鮮半島での対立と分断の日々。
その歴史を「過去のもの」にするため、二人の指導者にはさまざまな努力をしてほしい。
難しい道のりは続くでしょうが、この一年間に起きた変化を考えれば、夢物語ではありません。

空母化の研究 専守防衛からの逸脱だ - 朝日新聞(2018年6月3日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13523828.html
http://archive.today/2018.06.03-010323/https://www.asahi.com/articles/DA3S13523828.html

安倍政権がまたひとつ、戦後日本の防衛政策の転換を画策している。専守防衛の原則を踏み外す空母の保有である。
2015年に就役した海上自衛隊最大の護衛艦「いずも」は空母のような甲板を持ち、多くのヘリを一斉に運用できる。設計段階から戦闘機を載せる空母への改修が想定されていたが、3月以降、政府・自民党内の動きが相次いで表面化した。
まず小野寺防衛相が国会で、米国製の最新鋭ステルス戦闘機F35Bの搭載を視野に研究中であると初めて認めた。4月には防衛省が米軍の後方支援を目的とする調査報告書を公表した。
政府の動きを後押しするように、自民党は年末の防衛大綱策定に向けた先日の提言で「多用途運用母艦」の導入を打ち出した。「専守防衛の範囲内でさまざまな用途に用いる」としているが、攻撃力を格段に高めた空母であることは疑いない。
空母の保有は、旧海軍の伝統を受け継ぐ海上自衛隊の長年の「悲願」でもある。防衛省は今も、研究段階であって具体的な検討はしていないという立場だが、「動く航空基地」の実現に向け、水面下で着々と準備を進めている。
歴代内閣は憲法9条の下、自衛のための必要最小限度の範囲を超える攻撃型空母、大陸間弾道ミサイルICBM)、長距離戦略爆撃機保有は認められないとの見解を踏襲してきた。
防衛省内には、離島防衛が目的なら「攻撃型」空母に当たらないとの考えもあるが、攻撃と防御の線引きはあいまいだ。安全保障関連法によって世界のどこにでも展開し、米軍の発進拠点となり得る。専守防衛の枠内に収まるわけがない。
かねて安倍首相は、専守防衛に懐疑的な姿勢をとってきた。2月の衆院予算委員会で、首相はこの方針を「堅持する」としつつ「純粋に防衛戦略として考えれば大変厳しい現実がある」「相手からの第一撃を事実上甘受し、国土が戦場になりかねないものだ」と語った。
だが専守防衛は、再び日本が他国の脅威とならないという国際的な宣言でもある9条とあいまって、東アジアの軍事的な緊張を緩和する役割を果たしてきた。なし崩しに転換すれば、周辺国との間で不毛な軍拡競争を招く恐れがある。
防衛省内にも「空母を持つ資金的・人的余裕はない」との慎重意見がある。軍事と外交を両輪とし、限られた予算の中で、どのように地域の平和と安定を確保するか。大局に立った戦略を構想すべきだ。

教え子戦場に送らない 教育関係慰霊祭 非戦の誓い新た - 琉球新報(2018年6月3日)

https://ryukyushimpo.jp/news/entry-731273.html
http://archive.today/2018.06.03-010509/https://ryukyushimpo.jp/news/entry-731273.html

第2次世界大戦で犠牲になった児童・生徒や教職員らを追悼する「第65回教育関係戦没者慰霊祭」(県教育会館主催)が2日、那覇市久茂地の県教育会館内の教育関係戦没者慰霊室で行われた。遺族や関係団体の代表、県民ら約70人が参列し、戦争で犠牲になった当時の教員や生徒らの冥福を祈った。
慰霊室には、戦没した教員や職員、児童・生徒ら7609人の名前が刻まれている。1944年に米潜水艦の攻撃を受けて沈没した対馬丸に乗っていた犠牲者878人も含まれている。
式辞で県教育会館の佐賀裕敏理事長は「二度と戦争による惨禍を起こさず、教職員として教え子を再び戦場に送らないという反戦平和の誓いの場としている」と述べ、非戦の誓いを新たにした。
県遺族連合会の宮城篤正会長は「戦争は実に残酷なものだ。平和教育の提唱は平和への原点だと考える」とあいさつした。
慰霊祭には高校生も参加した。献花した首里高校2年の比嘉茉凛さん(17)と与那城遥香さん(17)は「遺族の方々の思いを受け継ぎたい」「戦争を繰り返さないようにしたい」などと語った。
仲吉千賀子さん(歌)、眞榮田えり子さん(フルート)、奥平めぐみさん(ピアノ)の3人が、追悼の思いを込めて「ラルゴ」「対馬丸哀歌」「月桃」の3曲を演奏した。

世界遺産取り下げ 自然と基地は相いれない - 琉球新報(2018年6月3日)

https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-731244.html
http://archive.today/2018.06.03-010631/https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-731244.html

政府は世界自然遺産候補の「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」について、国連教育科学文化機関(ユネスコ)への推薦をいったん取り下げることを閣議了解した。
今後、推薦書を再提出する際、遺産価値に挙げていた生態系と生物多様性のうち、生物多様性に絞ることも決めた。理由はユネスコの諮問機関である国際自然保護連合(IUCN)の勧告で、生態系の連続性を確保できていないと判断されたためだ。
「資産の分断が生物学的な持続可能性に重大な懸念がある」と指摘された場所は、未返還の米軍北部訓練場を指しているはずだ。推薦地を分断する形で存在しているからだ。
北部訓練場は2016年12月に過半の4010ヘクタールが返還された。しかし現在も3500ヘクタールが残されている。登録延期を勧告したIUCNは、返還された北部訓練場跡地を推薦地に含めるよう求めた。
理由として推薦地の「価値と完全性を大きく追加するもの」と意義付けた。その推薦地を「世界的な絶滅危惧種の保護のために高いかけがえのなさを示す地域」と評価した。生態系を維持する上で、極めて重要な地域なのだ。それは訓練場として残された地域も同様だ。
政府は訓練場跡地を国立公園に編入後、推薦地に追加し、遺産価値を生態系に絞った上で19年2月までに推薦書を再提出し、20年夏の登録を目指す。
この地域を世界自然遺産として登録されることは極めて意義深い。そうであるからこそ、推薦書の遺産価値を生物多様性に絞るのではなく、当初通りに生態系も含めるべきではないか。
そのためには北部訓練場の全面返還が欠かせない。さらに生態系の価値を認めさせるためには、推薦地を陸地だけでは不十分との指摘もある。日本自然保護協会は声明で「森川海の生態系の連続性を示すことができる流域・沿岸域・海域まで含めて推薦地へ組み込むことが重要である」と指摘した。
本島北部の海域を推薦地に含めるならば、貴重なサンゴが群生する名護市の大浦湾を埋め立てることなどできないだろう。米軍普天間飛行場の返還に伴う名護市辺野古の新基地建設について、IUCNは陸地だけの推薦地としては「登録に与える影響に懸念があったが、一定の距離がある」としている。
その一方で「厳格な外来種の防除対策」を求めている。環境負荷を危惧する意見が出ていたことも勧告に記された。自然遺産と米軍基地は相いれないのだ。
世界自然遺産条約は、人類共有の価値ある自然または文化を未来に引き継ぐことを目的にしている。人類の宝ともいえるやんばるの自然を未来に残すためには、戦争を引き起こす米軍基地を残すことは許されない。