終戦の日 不戦の誓い次世代へ 毎日「平和のブログ」10年目 - 東京新聞(2017年8月16日)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017081690070937.html
https://megalodon.jp/2017-0816-1323-45/www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017081690070937.html

七十二年前の八月十五日、東京都江東区の永井至正(よしまさ)さん(85)は、旧満州中国東北部)から引き揚げる途中で、解放に沸く朝鮮の平壌駅構内にいた。兄を特攻隊で失い、命からがら日本にたどり着いたかつての軍国少年は戦後「再び戦争はさせない」と強い思いを抱いた。永井さんは戦争体験を次世代に語り継ぐため、この九年間、毎日、平和への思いをブログにつづっている。 (片山夏子)
「毎日、毎日、あの戦争は、特攻隊で死んでいったのは何だったのかを考える。そして今生き残ったもののできることは何か自問する」。十五日、永井さんは自宅のパソコンで自身のブログ「満州っ子 平和をうたう」に書き込んだ。終戦の年がよみがえる。
永井さんは旧満州の公主嶺(こうしゅれい)市で母と姉と暮らしていた。一九四五年八月九日、旧ソ連が侵攻し、当時十三歳だった永井さんは二日後、家族と共に貨車に飛び乗った。ぎゅうぎゅう詰めで蒸し暑く、食べ物もトイレもない。体力の無い人から死んでいった。十五日夜、終戦平壌で知った。
ブログは二〇〇八年六月に始め、旧満州での暮らしなどをつづった。昨年八月十五日には、特攻隊員として二十歳で戦死した兄の神島利則さんのことや、関東軍でロシア語の暗号解読をして戦犯としてシベリア抑留された兄の四郎さん(享年五十一)のことに触れ「『再び戦争はさせない』の思いいっぱい」と書いた。
最近、ブログを見た旧満州での友人の子や孫から連絡が来る。昨年末、長崎県の三十代女性から「夫の曽祖母が幼い祖父を連れ、満州から引き揚げてきた。夫のルーツをたどりたい」とメールが来た。
「戦争体験者の子や孫の世代から『祖父や父が特攻隊や満州でのつらい体験を語らなかったので、戦争のことを知りたい』といった真剣なメールがたくさん来る。ブログはもうやめられない」。永井さんは、次の世代とつながっていると感じている。
十五日はこう締めくくった。「近い将来、戦争体験者がほとんどいなくなる。お子さんやお孫さんたちにあの戦争をしっかり伝えること、そしてその人たちがまた次の世代に伝えることを念じたい」

満州っ子 平和をうたう/BIGLOBEウェブリブログ
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法科大学院の撤退止まらず 国立、有名私大で募集停止 - 東京新聞(2017年8月15日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/education/edu_national/CK2017081502000173.html
https://megalodon.jp/2017-0816-1324-50/www.tokyo-np.co.jp/article/education/edu_national/CK2017081502000173.html

法科大学院の撤退が止まらない。地方国立大に続き、首都圏の有名私立大にも波及。二〇一五年度以降に募集を停止した大学院は二十四校に及び、さらに一八年度からは青山学院大や立教大など四校が募集しないと発表した。司法試験合格率の低迷に伴う不人気が主要因だが、そもそもの制度設計に難があったとの指摘もあり、大学院側から「国の施策に振り回された」との恨み節も漏れる。
▽合格率低迷
法科大学院を維持するには多くの教員を必要とし、どうしても財政的に赤字になる」。六月一日に記者会見した青山学院大の三木義一学長は、募集停止の理由をそう説明した。近年は定員割れが続き、一七年度は教員十四人に対し、在籍する学生はわずか二十九人だった。
〇四年度にスタートした法科大学院は司法試験対策偏重を見直し、法学未修者や社会人などを念頭に、多様な経歴を持つ法曹を養成する役割が期待された。最大で七十四校が開設し、定員は計約五千八百人に及んだ。
しかし、当初は七〜八割と見込んでいた司法試験合格率はここ数年、20%台と、法学未修者を中心に低迷。高い費用がかかる法科大学院を経なくても司法試験を受けられる「予備試験」が法曹への最短ルートとして存在感を増していった。
こうした現状に学生の法科大学院離れは加速度的に進み、〇四年度に最多の延べ七万二千八百人だった志願者数は五年後に三万人を下回り、一六年度は一万人を割った。定員割れの法科大学院も続出。一一年度には早くも初の募集停止が私立大であり、一五年度には新潟大や信州大などといった地方国立大にも募集停止が広がっていき、ほぼ半数の三十九校に減った。
▽需要読み誤り
相次ぐ法科大学院の募集停止や廃止の背景には、法曹需要の読み誤りがあったとの指摘もある。
政府は〇二年、法曹人口を大幅に増やす必要があるとして、司法試験合格者数を「一〇年ごろに年間三千人」とする計画を閣議決定した。しかし、法曹需要は伸び悩み、政府は一三年に三千人計画を撤回、一五年に「千五百人以上」に下方修正した。
司法試験合格率の低迷が、法科大学院不人気に拍車を掛け、さらに定員割れや合格率低下を招くという負のスパイラルを打破しようと、文部科学省は下方修正に合わせて定員抑制や統合の模索を始める。
一五年度からは司法試験合格率や定員充足率などに応じて補助金の配分に差をつける制度を開始。最低評価だと補助金の配分率がゼロとなるもので、事実上、撤退を促すものと受け止められた。
こうした状況に「法曹養成制度自体に矛盾がある」とある法科大学院の教授は不満を吐露する。「体系的に法曹を養成するという法科大学院の趣旨は間違っていないが、法曹需要の読み違いや抜け道的な予備試験の実施で、改革の趣旨が曖昧になっている」と訴えた。

(私説・論説室から)標的にされる島 - 東京新聞(2017年8月16日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2017081602000142.html
https://megalodon.jp/2017-0816-1325-41/www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2017081602000142.html

米領グアムの周辺に北朝鮮がミサイル発射を警告したというニュースに、この夏に沖縄で出会ったグアムの高校教師、サビーナ・ペレーズさん(49)のことを思い出した。
先住民のチャモロ人である彼女は、米軍駐留地域の女性が集う「軍事主義を許さない国際女性ネットワーク会議」に仲間と一緒に参加し、グアムの基地被害について訴えた。
実弾演習のために自然豊かなチャモロの聖地が奪われ、森や海の破壊がすさまじいこと。マリアナ諸島のグアムは第二次大戦中には「大宮島」と呼んで日本軍が占領した時期もある。米軍は最新鋭のミサイル迎撃システムを強行配備し、サビーナさんの訴えは大国に翻弄(ほんろう)される島の悲しみを語っていた。
基地に対する女たちの異議申し立ては根本的な問いかけに収れんする。<米軍は本当に私たちを守る存在なのか。米軍の駐留によってむしろ軍事的脅威にさらされるのではないか>。米朝の挑発合戦の中でそのリスクは現実味を帯びようとしている。
沖縄では先週末、辺野古の新基地建設に抗議する県民大会が開かれた。炎天の下、四万五千人もの県民が集まったのはなぜか。沖縄もグアムと同じ、脅威にさらされる側にあり続けてきたからだ。米軍だけでない。中国の脅威を理由にして自衛隊も増強されている。脅威があるなら強めるべきは外交努力だ。標的にされる島の声を共有したい。 (佐藤直子

憲法70年 学びの保障、広く早く - 朝日新聞(2017年8月16日)

http://www.asahi.com/articles/DA3S13088607.html
http://archive.is/2017.08.16-042540/http://www.asahi.com/articles/DA3S13088607.html

多くの人が大学や短大、専門学校で学ぶことにはいかなる意義があり、コストを社会全体でどう分かち合うべきか。そんな議論が活発になっている。
安倍首相が改憲項目の一つとして「高等教育の無償化」の方針を打ち出したからだ。
もっとも、先んじて提唱した日本維新の会に同調するための提案との見方がもっぱらで、自民党内もまとまっていない。
無償化は法律を改めれば実現できる。わざわざ改憲を持ちだすまでもない。ただ「高等教育を万人に開かれたものに」という考え自体は正しく、その重要性はますます高まっている。
憲法26条は「能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利」を保障し、これを受けて教育基本法は、人種や信条などに加え、経済的地位によっても教育上差別されないと定めている。
国は教育の機会均等の実現に努める責務がある。改憲に政治のエネルギーを費やすよりも、この現憲法の精神を、確実に実践していくことが肝要だ。
東大の小林雅之教授らの調査では、年収400万円以下と1千万円超の家庭では、私大への進学率に倍に近い開きがある。国立大に進んでも授業料は年間約54万円とかなりの負担だ。
資格や収入の形で恩恵を受けるのだから、学費は本人や家庭が負担するのが当たり前だという考えが、根強くある。だが技術革新や国際化に伴い、仕事に求められる知識や技能のレベルは上がっている。いまや高等教育はぜいたく品ではない。
貧富による進学格差を放置するとどうなるか。
貧困が再生産され、社会に分断をもたらし、国の根幹をきしませる。逆に、大学や専門学校で学び、安定した収入を得る層が厚くなれば、税収が増えて社会保障などを支える。お金の問題で高等教育をあきらめる人がいるのは、日本全体の損失だという認識を共有したい。
一律無償化には3・7兆円の財源が必要で、ただちに実現するのは難しい。まずは奨学金制度の改善を急ぐべきだ。
日本の奨学金は貸与型が人数で9割近くを占め、かつ利息のあるタイプが主体だ。返済の不要な国の給付型奨学金がやっと段階的に始まったが、対象は1学年2万人と極めて少ない。
有利子型を無利子型に置き換えてゆき、給付型も広げる。授業料減免も組み合わせ、負担軽減を進める必要がある。
放課後の学習支援など、大学進学前の小中高段階からの支援も重要だ。手を尽くして、26条が真に息づく社会を築きたい。

水銀汚染のない世界へ 水俣条約、きょう発効 - 朝日新聞(2017年8月16日)

http://www.asahi.com/articles/ASK895QSJK89ULBJ00D.html
http://archive.is/2017.08.16-042350/http://www.asahi.com/articles/ASK895QSJK89ULBJ00D.html


国際的な水銀規制のルールを定めた「水俣条約」が16日、発効した。水銀による環境汚染や健康被害を防ぐため、採掘や使用に加え、輸出入なども含めた包括的な管理に取り組む。
条約には、

  • 新規の水銀鉱山の開発禁止
  • 定量以上の水銀を使った蛍光灯や体温計などの製造・輸出入の禁止
  • 水銀廃棄物の適正管理

などが盛り込まれた。2013年に熊本県で開かれた国際会議で採択、今年5月に締約国が50を超え、発効が決まった。今月8日時点で日本や米国、中国や欧州連合(EU)、アフリカ諸国など74の国と地域が締結している。
条約名には、メチル水銀によって深刻な神経障害を引き起こした水俣病のような健康被害を二度と繰り返してはならないという決意が込められている。
日本の水銀使用量は1960年代のピーク時で年2500トンだったが、この数年は年10トン未満。一方、南米やアフリカなどの途上国を中心に世界では2005年に約3800トンが使われた。小規模な金採掘現場では、金を取り出すために水銀が今も使われ、労働者や地域の人たちの健康被害が心配されている。
9月24〜29日には、スイス・ジュネーブで第1回締約国会議(COP1)が開かれ、途上国への資金提供の仕組みなどが議論されるほか、熊本県の高校生や水俣病患者の支援団体が参加し、世界に向けたメッセージを発信する。(戸田政考)

福島第一 廃炉に税金1000億円超 7月まで本紙集計 - 東京新聞(2017年8月14日)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017081490070351.html
https://megalodon.jp/2017-0816-1111-33/www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017081490070351.html


東京電力福島第一原発事故廃炉作業で、国が直接、税金を投入した額が一千億円を超えたことが、本紙の集計で分かった。汚染水対策や調査ロボットの開発費などに使われている。今後も溶け落ちた核燃料の取り出し工法の開発費などが必要になり、金額がさらに大きく膨らむのは必至だ。 (荒井六貴)
廃炉費用は東電が負担するのが原則だが、経済産業省資源エネルギー庁によると「技術的に難易度が高い」ことを基準に、税金を投入する事業を選定しているという。担当者は「福島の早い復興のため、国が対策を立てることが必要」と話す。
本紙は、エネ庁が公表している廃炉作業に関する入札や補助金などの書類を分析した。廃炉作業への税金投入は二〇一二年度からスタート。今年七月までに支出が確定した業務は百十六件で、金額は発注ベースで計約千百七十二億六千万円に上った。
事業別では、建屋周辺の地下を凍らせ、汚染水の増加を防ぐ凍土遮水壁が、設計などを含め約三百五十七億八千万円。全体の三割を占め、大手ゼネコンの鹿島と東電が受注した。
ロボット開発など、1〜3号機の原子炉格納容器内の調査費は約八十八億四千万円だった。福島第一の原子炉を製造した東芝と日立GEニュークリア・エナジーのほか、三菱重工業と国際廃炉研究開発機構(IRID)が受注した。
受注額が最も多いのは、IRIDの約五百十五億九千万円。IRIDは東芝などの原子炉メーカーや電力会社などで構成する。
国は、原発事故の処理費用を二十一兆五千億円と試算。このうち、原則東電負担となる廃炉費用は八兆円とされている。除染で出た汚染土を三十年間保管する中間貯蔵施設は国の負担だが、賠償費用は主に東電や電力会社、除染費用も東電の負担が原則だ。