現地は、新任務は… PKO駆け付け警護 先発隊出発 - 東京新聞(2016年11月21日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201611/CK2016112102000130.html
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安全保障関連法に基づく「駆け付け警護」などの新任務を初めて与えられ、南スーダン国連平和維持活動(PKO)に赴く陸上自衛隊第十一次隊の先発隊が二十日、青森空港を民間機で出発、成田空港から出国した。二十一日に首都ジュバに到着する予定。 (荘加卓嗣、石井紀代美)
十一次隊は、隊長の田中仁朗(よしろう)一等陸佐ら計約三百五十人。第九師団第五普通科連隊(青森市)など主に東北地方の部隊の隊員で編成する。女性隊員は過去最多の十五人で、夫婦の隊員もいる。先発隊は約百三十人で、残る主力は二グループに分かれて三十日と来月十四日に現地へ向かう。
駆け付け警護は、離れた場所にいる邦人や国連関係者らを救援する任務。これまでPKOでは正当防衛などの場合しか武器使用を認められなかったが、駆け付け警護では、相手の妨害を排除する目的でも武器を使えることになった。
一方、七月にジュバ市内で大統領派と第一副大統領派の間で大規模な武力衝突が起きるなど、現地情勢は不安定とされる。政府は、駆け付け警護の活動範囲をジュバ市内とその周辺に限定したが、武器使用の幅が広がった新任務により、自衛隊が戦闘に巻き込まれるリスク増大を懸念する声が出ている。
他国軍と宿営地を守る「宿営地共同防衛」を含めた新任務は、来月十二日から実施できる。
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一方、陸自第十次隊の先発隊員約六十人は二十日、新千歳空港に帰国した。第七師団の駐屯地で取材に応じた先発隊長の蝶野元希(もとき)二等陸佐(46)は、現地の治安情勢について「ジュバで銃撃戦はあったが、命の危険は感じなかった。事前の情報よりかなり平穏だった」と語った。
◆家族ら見送り 思い交錯
「気を付けて」。青森空港を出発した陸自第十一次隊の先発隊員の家族らは二十日、無事を祈りながら隊員たちを乗せた飛行機を見送った。
小雨が舞う中、飛行機は午前十時すぎ、青森空港の滑走路を走りだした。空港三階の送迎デッキでは、家族や自衛隊員らが、機影が見えなくなるまで手や日の丸を振り続けた。
「はじめから危険な仕事だと覚悟している。新任務は訓練をしっかりしているから大丈夫だと思う」。夫を見送りに来たという仙台市の女性(32)は離陸直後、ハンカチで涙を拭った。母親に肩車をされて眺める男児や、無邪気に「お仕事頑張ってねー」と大きく手を振る女児の姿もあった。
多くの隊員が、家族と同じバスで空港に到着した。家族が作る花道をハイタッチや敬礼しながら通った。飛行機に乗り込む際も搭乗口の窓からデッキを見上げて手を振ったり、きょろきょろと家族を探したり、なごり惜しげな様子だった。
一人娘(30)を見送りにきたという秋田県北秋田市の鈴木正敏さん(60)は「心配は心配だが、本人が希望して行く。仕事をしっかりとやってきてほしい。万が一のことがないように祈るだけ」と話した。
自衛官国際貢献をしたいという希望を持っている人ばかり。長男は選抜されていくのだから、誇らしい」と語るのは、かつて自衛官だったという父親(62)。「新任務付与は人道的見地からやらざるを得ず、当然だ」と言い切る。記者とのやりとりで、今年七月にジュバで発生した大規模な衝突に話題が及ぶと、「あまり深く考えないようにしている」と複雑な表情を浮かべた。

「天皇」有識者会議 摂政論には無理がある - 毎日新聞(2016年11月21日)

http://mainichi.jp/articles/20161121/ddm/005/070/002000c
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政府が設けた天皇陛下生前退位に関する有識者会議で専門家からのヒアリングが続いている。対象16人のうち11人の意見を聞き終えたが、退位への賛否は割れている。
退位を容認する5人の専門家は、陛下の心情を尊重し退位を支持する多くの国民世論を反映し、高齢化社会のなかで人道的な配慮の必要性などを訴えている。
一方、反対・慎重意見の6人の専門家は陛下の気持ちに配慮しつつ現行制度の枠内で対応できるという立場だ。全員が解決策として提示したのが摂政(せっしょう)などを置くことである。
憲法第5条が規定する「摂政」は天皇に代わって国事行為を担う場合に設置されるが、皇室典範はその要件を「精神もしくは身体の重患または重大な事故」に限定している。
専門家からは「高齢により国事行為ができない場合」を設置要件に追加する皇室典範改正を行うか、現行法のまま「高齢」まで拡大解釈を認める案などが提起されている。
しかし、退位の問題が突きつける「高齢化時代の天皇の役割」について、単に摂政を置いて皇太子に引き継げば解決できるというのは、無理がないだろうか。
摂政論の背景には、天皇の在り方を「象徴」と位置づける現憲法ではなく、「神聖不可侵」の存在とする明治憲法やそれ以前の天皇像に回帰させようという考えがうかがえる。
ヒアリングでは「天皇は民族の永世の象徴だ」「宮中で国と国民のために祈ってくだされば十分だ」「天皇はいてくださるだけでありがたい」などの意見があった。
陛下は「象徴」の在り方として「常に国民と共にある自覚」を持ち、国民に分け入って被災地訪問や戦跡慰霊の旅を続けてきた。そうした天皇に国民は敬意を抱いてきた。
陛下は、天皇の形式化を招きかねず、「象徴」としての役割を果たせないという懸念から、摂政を置いて活動を代行してもらうことには否定的な考えを示唆している。
専門家からは陛下のこうした活動について「ご自身で拡大された個人的解釈による役割」「被災地慰問は極力おやめになり、おことばだけで十分だ」などの意見も聞かれた。
天皇は皇居の奥に引き下がり、高齢化に伴う限界は摂政を置いて切り抜けようというのは、陛下が積み上げ、国民が支持する象徴像を否定することにつながりかねない。
むしろ摂政を置く期間が長引けば「象徴の二重性」がおきるといった指摘もある。摂政制度はあくまで緊急時に起動するシステムだ。
天皇の歴史と伝統は確かに重い。それを踏まえたうえで時代に対応した解決策が求められている。

<東京・豊洲新市場>記録不存在の問題 的確な経過検証に欠かせない公文書 - 毎日新聞(2016年11月21日)

http://mainichi.jp/articles/20161121/org/00m/040/004000c
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東京都の豊洲新市場移転をめぐる混乱の中、公文書管理のあり方が問われている。盛り土をしない空間を作る過程を記した文書がそろわず、調査の障害になっているためだ。文書が存在しない背景には、都の文書作成ルールにあいまいな点があることや、担当課の判断で文書を捨てられる仕組みもあるようだ。小池百合子都知事は情報公開を改革の売り物にするが、文書がなければ公開はできない。【高橋昌紀、青島顕】
なかった?捨てた?
「さまざまな記録が残っているはずです」。盛り土問題の検証をする「豊洲市場地下空間に関する調査特別チーム」の活動について、小池知事は9月23日の記者会見で期待感を示した。ところが検証に必要な文書の多くが残っていないことが明らかになってきた。
市場の建物下に地下空間を設置する方針を決定したとされる2011年8月18日の中央卸売市場新市場整備部の部課長会議の会議録も見つかっていない。検証のための最も重要な文書の一つだ。
市場の文書管理を担当する管理部の担当課長は取材に対し「理由は分からないが、考えられることは二つある」と話す。
一つはそもそも会議録を作成しなかった可能性だ。担当課長によると、作成するかどうかは会議に関わる部課長やその上司の判断次第で、作るかどうか明文化された基準はないという。「二つ以上の部署が関われば会議録を作ることがあるが、部内の会議は通常作成しない。この会議でも作成しなかった可能性が高い」と説明する。
二つ目は、既に廃棄された可能性だ。作成した場合の保存期間は、都文書管理規則に基づいて総務局が作った「文書保存期間表」に沿って決められるが、「会議録」については明示されておらず、保存期間1年の「事前手続きに関する書類」とみられるという。担当課長は「作成されていても1年以上たっており、廃棄されたのかもしれない」と話す。
文書管理について国は11年に公文書管理法を施行し、行政の意思決定過程を残し、跡づけることができるような仕組み作りを始めた。同法は地方自治体などに対しても「法の趣旨にのっとり、その保有する文書の適正な管理に関して必要な施策を策定し、及びこれを実施するよう努めなければならない」と定め、公文書管理条例の制定を促している。
一方、東京都は文書の作成や廃棄のルールは議会を通して制定する条例ではなく、内規の「文書管理規則」で管理し、運用を担当局の権限に委ねている。担当課長の判断で文書を捨てる仕組みになっている。国の公文書管理法が文書を捨てる際に事前に首相の同意(実際は内閣府の公文書管理課がリストなどをチェック)を必要としているのに比べ、ハードルは低そうだ。
公文書管理条例について都総務部文書課は取材に「検討していない。規則の内容については、適宜改善や見直しを行っている」と答えた。
小池都政は情報公開の強化を打ち出しており、「情報公開調査チーム」を9月に設置して公開状況の検討を始め、これまでに3回の会議を開いた。しかし、情報公開と車の両輪と言われる公文書管理について、チームの担当者は「取り上げるテーマは有識者による特別顧問らを中心に決めており、公文書管理を取り上げる予定はない」としている。
識者、都の姿勢批判
こうした都の公文書管理や情報公開の姿勢について、今月5日、市民団体が都内でシンポジウムを開いた。講演した内閣府公文書管理委員会委員の三宅弘弁護士は「保存期間が満了したら担当課長の判断で文書を原則廃棄できる都の仕組みでは、情報公開請求をされても『文書が不存在だ』と逃げる余地がある。都の規則は公文書管理法の精神にのっとったものではない」と批判した。
日本弁護士連合会の中本和洋会長は今月2日、東京都や全国の地方公共団体に対して速やかに公文書管理条例を制定するよう求める声明を出した。声明では豊洲市場の問題について「大きな要因は適時適切な文書が作成されなかったことにある。意思形成過程が判明するような文書が作成されていれば、より的確に事実経過を検討することができたはずだ」としている。
文書管理条例、8自治体だけ 全都道府県・政令市調査
都道府県・政令市計67自治体のうち、国が制定を促している公文書管理条例を制定済みだとしているのは、4県、4市の計8自治体にとどまっていることが毎日新聞の調べで分かった。制定に前向きな姿勢を示している自治体は少数にとどまる。
調査は今月、文書や電話で行った。条例を設置していると回答したのは島根など4県と、大阪市など4市だった。このうち名古屋市は「情報あんしん条例」という形式で公文書の管理について定めている。
条例を設置していない自治体に準備状況や意欲について質問したが、「制定を準備中」と明言したところはなかった。ただ滋賀県は昨年から有識者懇話会を開いて条例制定を検討しているほか、新潟県米山隆一知事は今月、県弁護士会の要望に対して条例化に前向きな姿勢を示した。
一方「制定を検討していない」と答えた自治体は東京都、大阪府など28都府県、京都市など5市に上った。
行政として文書を使わなくなった後も重要な文書をまとめて保管し、住民の利用に供する公文書館の有無について尋ねたところ、設置ずみなのは39自治体だった。
公文書管理に詳しいNPO法人・情報公開クリアリングハウス(東京)の三木由希子理事長は、条例が必要な理由について「規則や規定は行政部局の都合でルールを変えることができる。国が2001年の情報公開法施行直前に保存期間を明確にしていなかった文書を大量に廃棄したのは、公文書管理法がまだなかったためにできたことだった。地方自治体も条例を作り、作成・保存・廃棄・公文書館移管などについて安定的に運用できる仕組みを作ることが大事だ」と話す。

条例制定済みの自治
鳥取県

島根県

香川県

熊本県

札幌市

相模原市

名古屋市

大阪市