週のはじめに考える 拝啓未来の私自身へ - 東京新聞(2016年7月10日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016071002000146.html
http://megalodon.jp/2016-0710-1128-27/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016071002000146.html

なぜ投票してほしいのか。今日投開票の参院選が、国の形を変える選挙になり得るから。特に若い皆さんには、自分の未来を自分で決めてほしいから。
はじめはきっと、学園祭のノリでした。
愛知県大府市至学館大学では一昨年から、主に「人間・社会と法」という講座の中で“主権者教育”を展開しています。
実習の一環としてことし二月、地元大府市との間で「選挙啓発に関する協定」を締結し、この春からは、「十八歳選挙権」の参院選に的を絞って、三年生有志が活動計画を練ってきた。
チラシやポスターを手づくりし、配布する。立候補予定者の公開討論会を開く。そして最大のミッションは、学内に期日前投票所を設置して運営に当たること−。
健康スポーツ科学科の板橋彩衣さん(20)は「何か大きなことができるかな」と期待して、応募した。
ところが、せっかく作ったチラシを学生たちは受け取らない。しかし、うつむいて足早に通り過ぎていく学友の後ろ姿に、ついこの間までの自分を見いだした。
同じ学科の山田健太さん(20)は「興味がないことだから、やってみよう」と手を挙げた。
期日前投票所では、入場券の確認係、主に二重投票の防止に目を光らせた。
間違いは許されない。一票の重さが、いつの間にか身に染みた。
同じ大学の仲間が、何やら真剣に投票を呼びかけているらしい−。口コミは、じわじわと広がりました。

◆この国のかたちが変わる
公示後のある日、担当の越智久美子助教は、JR大府駅とキャンパスを結ぶスクールバスの車中で、こんな会話を耳にした。
「選挙、どうする」「ところで比例代表って何よ」「ジモトが長野なんだけど、投票に帰れるかしら」…。ファッションや音楽、恋愛やスポーツなどを差し置いて、選挙が話題になっていた。
「主権者って何なのか、それはまだ、よく分からない。だからこそ、(選挙や政治に)無関心ではいられない、いちゃいけないと、考えるようにはなりました」
延べ四日間の投票事務体験のあと、今日を迎えた若者二人の感想です。
「十八歳選挙権」の話題が先行しています。“十八歳”が重みを持つのは、きょうのこの参院選の投票結果が、日本という国のかたちを大きく変えることになるかもしれないから。
参議院改憲派が三分の二以上の議席を占めれば、すでに三分の二を超えた衆議院とともに、憲法改正の発議が可能です。
発議とはこの場合、憲法改正国民投票にかけましょう、という提案です。十八歳は再び、重大な選択を迫られます。
国民投票で賛成が過半数に達すると、改正が成り立ちます。つい先日の英国の出来事も、それにまつわる喜怒哀楽も、遠い国の遠い出来事ではありません。
もしも戦争放棄を定めた憲法が“改正”されて、この国が国防軍を持つ普通の国になったとき、遠い異国の戦場へ銃を担いで出かけて行くのは、私たち“大人”でも、政治家でもありません。十八歳を含む若い世代の皆さんです。
憲法とは国の骨格です。骨格が変われば国のかたち、国の未来も当然大きく変わります。
その未来をより長く生きるのは、当然若い皆さんです。
だとすれば、投票権を“与える”だなんておこがましい。十八歳こそ、投票の権利を持ってしかるべきではないですか。

◆大人たちは木を植える
♪未来の自分に宛てて書く手紙なら/きっと素直に打ち明けられるだろう…。
アンジェラ・アキさんが歌う「手紙〜拝啓十五の君へ〜」から。
そう、投票とは、一票とは、未来の自分自身へ書き送る手紙のようなものなのかもしれません。
では、大人はどうでしょう。
NHK朝の連ドラ「とと姉ちゃん」。大地真央さんのこんなセリフが思い出されます。
「木材ってのは、植えた時は自分の利益にならないのさ。それでも四十年後に生きる人のことを思って植えるんだ−」
一票という鍬(くわ)をふるって、未来という土を耕し、木を植える人でありたいと。

<10代が投票すべき5つの理由><5つの現場> 総集編 - 東京新聞(2016年7月8日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/senkyo/kokusei201607/ren/CK2016070802000180.html
http://megalodon.jp/2016-0710-1129-05/www.tokyo-np.co.jp/article/senkyo/kokusei201607/ren/CK2016070802000180.html

◆連載「5つの理由・現場」の概要

【1】奨学金
親の収入の減少や学費の上昇などを背景に利用者が増え、何らかの形で学生の2人に1人が利用する奨学金東日本大震災で背負った家の借金返済のため、家賃2万円のアパートに住む大学生は、昼食も食べず年中無休でアルバイトを続けるが、卒業後は奨学金の返済も始まる。岩重佳治弁護士は「奨学金問題を、若い人同士がつながって声を上げるきっかけに」と願う。
【2】雇用
正規雇用が増え、不安定な雇用。NPO法人「ほっとプラス」代表理事の藤田孝典さんは「今の若者にとっては、結婚さえ『ぜいたく』。先輩たちが普通に歩いてきた人生を送れない」と危ぶむ。40代の男性は、就職氷河期にやっと決まった会社をリストラされた。定年まで働けると思っていたが、国の助成金を利用した退職を強要するリストラビジネスに逃げ道を失った。
【3】保育
認可保育所に入所できない待機児童問題は首都圏で顕著だ。幼稚園と保育所の機能を併せ持ち、待機児童解消に期待された「認定こども園」も、国の想定の甘さから都内で認定返上が相次いだ。子を持つ母親からは「母親目線の施策を」との声が上がる。松田茂樹中京大教授は「若者が持続的に社会保障を受けるため、国民が(税で)広く負担するということに政治が向き合う時期」と話す。
【4】介護
2050年、日本の人口の約4割は高齢者となる推計。「今の若者が50代になるころ、現役世代は税金と保険料を支払うためだけに働くことになる」と結城康博淑徳大教授は警鐘を鳴らす。首都圏で介護施設が不足する懸念から、ついのすみかとして地方に移る高齢者も。地域の自主組織で60代が、1人暮らしの高齢者を見守る過疎地もあるが、都市部で「支え合い」は成り立つのか。
【5】年金
少子高齢化で、数の少ない現役世代が高齢者を支える「世代間仕送り」の年金制度に、若者からはあきらめの声が上がる。最悪の場合、国民年金の積立金が将来、なくなる可能性も。植村尚史早稲田大教授は「景気が良くなれば破綻しないというのは不誠実」と話す。支給開始年齢の引き上げも非現実ではなくなる中、高齢者の就労が推奨される。「引退が許されない社会」に懸念も。

自民党 HPで「中立性逸脱」事例募る…教員から批判 - 毎日新聞(2016年7月9日)

http://mainichi.jp/articles/20160710/k00/00m/040/043000c
http://megalodon.jp/2016-0710-1130-10/mainichi.jp/articles/20160710/k00/00m/040/043000c

自民党が、教育現場の「政治的中立性を逸脱するような不適切な事例」を、党のホームページ(HP)で募っている。党は中立性を逸脱した教員への罰則を含めた法改正を検討しており、そのための実態調査だと説明する。これに対し教員からは「生徒からの密告を促すものだ」と批判の声が上がっている。
木原稔・党文部科学部会長(衆院熊本1区)は7日、ツイッターに「18歳の高校生が特定のイデオロギーに染まった結論に導かれる事を危惧してます。皆さまのご協力をお願いいたします」と投稿し、HPのリンクを張った。
9日夕のHPには「教育現場には『教育の政治的中立はありえない』『安保関連法は廃止にすべき』と主張し中立性を逸脱した先生方がいることも事実」と記載があり、そのうえで「政治的中立性を逸脱するような不適切な事例」について、「いつ、だれが」など具体的な情報を所定の欄に記入するよう求めていた。
党によると、調査は6月25日に党文部科学部会がHPで始め、期限は未定で「参院選とは無関係」と説明する。同部会は、教育公務員特例法を改正して中立性を逸脱した教員に罰則を科せられるかを検討しており、調査結果を今後の議論の参考にするという。党側は集まった情報について「別の目的には使わない」とする。
東京都内の私立高校の男性教員は「自民党は生徒に密告させたいのか。戦時中の治安維持法を連想した。常軌を逸しているとしか思えない」と厳しく批判。神奈川県内の公立高校の男性教員は「権力を持つ側がこうしたことをすれば、現場が萎縮するだけ。我々は『政治を身近に』と思って主権者教育を進めているが、足かせにしかならない」と憤る。【伊澤拓也】