[大弦小弦]差別の二択 全否定か容認か - 沖縄タイムス(2020年7月6日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/596041

最近、考え込んだ質問がある。「本土出身で良かったことは」。言葉を探し、「知らないうちに得してばかりの人生なんだと思う」と答えた。本土出身で、男で、体の性に違和感がない異性愛者で。つまり多くの面で多数派で

宜野湾市議会が「男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」案を否決した。年齢、障がい、国籍などあらゆる多様性の尊重をうたい、ヘイトスピーチを含む人権侵害を禁止する内容だった

▼市政与党の反対論は、主に性の多様性に向けられた。ゲイであることを公表している文化人類学者の砂川秀樹さん(53)は市内に住むLGBTの友人たちの憤りと落胆を聞いた

▼否決翌日には、再上程と可決を求めるオンライン署名を初めて呼び掛けた。ネット上で自分の名が拡散される怖さもあったが、黙っていられなかった

▼議会では少数派の権利に関連して「慎重な議論が必要」という意見が出ていた。「すでに生きている私たちの権利が必要かどうか議論されること自体が痛み。数で否決されてしまうなら、なおのこと」と語る

▼一部の差別をあえて見過ごす反差別政策はあり得ない。宜野湾市が今後性の多様性を切り離した条例案を再提案するとしたら、それは差別容認の条例になる。行政、議会、多数派の市民には全ての差別を終わらせる責務がある。(阿部岳)

 

<金口木舌>万歳は誰のために - 琉球新報(2020年7月6日)

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-1150342.html

那覇市首里山川町の付近はかつて万歳嶺(ばんざいれい)(俗称・上(ウィー)ナチジナームイ)と呼ばれた。市資料によると、琉球国王・尚真が遊覧した際、国の繁栄を願う万歳の声が起き、1497年に「万歳嶺記」の碑を建てた

▼長い年月を表す中国の言葉「千秋万歳」が万歳の由来。万歳は長寿のほか、皇帝の寿命の意味もある。「明治事物起原」によると、両手をあげて祝意を表す行為の始まりは、1889年、大日本帝国憲法の公布時からだ
▼76年前、サイパンテニアン南洋群島で日本軍と米軍の地上戦が展開された。多くの県系移民も巻き込まれて犠牲となった。サイパンの組織的戦闘は7月7日に終わった
▼島を2カ月間逃げ回った住民や、「集団自決」(強制集団死)も発生した。サイパンのマッピ岬では「天皇陛下、万歳」と叫びながら海に身を投じる人がいて、米軍は岬を「バンザイクリフ」と呼んだ
▼9カ月後、同じ悲劇が沖縄でも繰り返される。第32軍司令部が置かれた首里は激戦地となり、首里城は燃えた。万歳嶺記の碑も破壊された。両手をあげる行為は投降、無抵抗の意思表示にもなった
▼戦後、万歳嶺の頂上付近に首里観音堂が再建され、碑も敷地内に復元された。万歳の語意には「いつまでも生きる」も含む。それは為政者ではなく、一人一人の民のためにある。南洋戦と沖縄戦で刻まれた教訓である。

 

(地獄耳) 女帝・小池百合子の最後の挑戦が始まった - 日刊スポーツ(2020年7月6日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202007060000107.html

★政界での興味は、選挙上手で抜群の政局勘を持つ都知事小池百合子がいつその座を明け渡して国政に逃げ込むか、その時にどの党でどういう形で転じるのかが焦点だ。自民党都連との確執は取れず、首相・安倍晋三もさして小池を重要視していない。党内では幹事長・二階俊博だけが小池を擁護する。そんな環境の中、小池は政党と選挙区をどう選ぶか。それも見もののひとつだ。政界は小池のサプライズ政局に翻弄(ほんろう)され、メディアは飛びつき有権者は混乱してきた。女帝・小池百合子の最後の挑戦が始まった。

都知事選終盤の3日、17年の衆院選民進党を壊し、小池とともに希望の党を作って野党を壊滅させた国民民主党前原誠司日本維新の会推薦の小野泰輔の応援に立った。小池の応援ではないのかと政界で話題になった。「都知事は誰がやっても大変。オリンピックやコロナの対応も大変だと思う」と小池批判もあっさりしたものだったが政界関係者は「ピンときた」という。「元都知事石原慎太郎の4期目と似ている。小池は次の衆院選で『国政にやり残したことがある』と都知事を放り投げ国政に転じるだろう。石原は当時、後継に副知事・猪瀬直樹を指名、当選させた。小池は今回、小野を副知事に指名するのではないか。熊本県副知事の経験もあるし、何より維新だからだ」。

★つまりこういうことだ。衆院選と都議選はどちらが先になるかわからないが、今、野党は分裂再編の時期に入り、立憲民主党も国民民主党も草刈り場になりかねない。前原はかねて維新と勉強会を進めており、早晩、国民から維新に移るだろう。小池は小野に後継を委ね、来年の都議選で都民ファーストの会を維新に合流させ生き残らせる。維新は労せずして都知事と都議会の会派を持てる。衆院選では自民党が大きく議席を減らし、維新との連立が模索され、小池は労せずして与党に返り咲く-。これなら前原の小野の応援も説明がつく。そんなにうまくいくものかと問うと、先の政界関係者は「これが、とらぬ緑のタヌキの皮算用」とオチをつけた。(K)※敬称略

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小池都知事、4年の任期全う明言せず テレ東番組で繰り返し質問も - SANSPO.COM(2020年7月5日)

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