<ぎろんの森>政治活動の自由 あははん♪ - 東京新聞(2024年2月17日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/309849

職業選択の自由 あははん♪」。1980年代後半のバブル真っただ中、テレビでしきりに流れていた女性向け就職情報誌のCMソングが頭の中を駆け巡ります。曲名は「憲法第22条の歌」。

というのも、自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を巡る国会審議で、岸田文雄首相=写真=が「政治活動の自由」を持ち出し、政治資金の透明化に慎重な態度を取り続けているからです。

例えば、政党から政治家個人に支払われ、使途公開の必要がない政策活動費への見解を野党側に尋ねられると「政治活動の自由と国民の知る権利のバランスの中で、真摯(しんし)に議論に向き合いたい」。

自民政治刷新本部の中間報告が政策活動費には一切触れていないことを追及されると「政治活動の自由に関わる問題なので、各党と法改正も含めて真摯に議論したい」という具合です。

もちろん政治活動の自由は最大限守られるべきです。国家が国民の政治活動を妨害することがあってはなりませんが、だからといって国民に選ばれた政治家が何をしてもいいわけではありません。

ましてや政治とカネの問題が国民の政治不信につながっているわけですから、不正をなくすための提案を、政治活動の自由を理由に取り合わないのは不誠実極まりない。

東京新聞は10日の社説「首相の資金集め 『脱法行為』看過できぬ」で「(規正法の)『抜け穴』をふさぐには、企業・団体献金を全面禁止する必要があるが、首相は企業の『政治活動の自由』を理由に否定的だ」「政治の信頼回復に向け『私自身が先頭に立つ』というが、その決意を疑わざるを得ない状況だ」と自民党総裁である首相の姿勢を厳しく批判しました。

憲法21条の「表現の自由」に基づく政治活動の自由は、政治家が何をしても許されるという根拠にも、政治資金が不透明なままでいいという理由にもなり得ません。自民党議員はいま一度、政治活動の自由とは何かを勉強し直してはどうでしょうか。「政治活動の自由 あははん♪」とでも口ずさみながら。 (と)