【政界地獄耳】裏金同様の武器輸出と抜け穴 兵器ロンダリングに関与したツケの想定あるのか - 日刊スポーツ(2023年12月29日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202312290000069.html

★22日、政府は「防衛装備移転三原則」の運用指針を議論なく改正し、外国企業から技術を導入し国内で製造する「ライセンス生産」の装備品について、ライセンス元の国に輸出することを可能にした。つまり米国からライセンスを得て、国内で製造している武器の完成品を米国に逆輸出する。これを受けて政府は地対空ミサイルシステム「パトリオット」、巡航ミサイルなどを迎撃する「PAC2」、弾道ミサイルを迎撃する「PAC3」の米国輸出を決めた。それも現在自衛隊保有し運用している“現品”を輸出するという。当然、わが国の防空システムは極めて手薄になる。ロシアは最近蜜月の北朝鮮を使い、日本海に向けミサイル実験を強化するだろう。

★この変則武器輸出は一体高く売れるのか、安く買いたたかれるのか。すぐさま、米ホワイトハウスのサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は「決定は日本の自衛隊との緊密な連携のもと、アメリカ軍が確かな抑止力と対応能力を維持することにつながり、日本の安全保障やインド太平洋地域の平和と安定に貢献することになる」と大歓迎を表明した。誰が見ても3国間の武器輸出でしかないが、27日、さっそくロシア外務省ザハロワ報道官が警告した。日本が輸出したパトリオットは最終的にウクライナに渡る可能性を「排除できず」、そうした事態が確認された場合は「ロシアへの敵対行為とみなされ、2国間関係において日本に最も深刻な結果をもたらす」とした。また、ウクライナへの武器供給は「世界と地域の安全保障に否定的な結果をもたらす」「直接、間接を問わず、罪のない犠牲者を増やし、ウクライナの残虐行為を助長するだけだ」と、ありとあらゆる方向から日本をけん制した。

★日本の防衛装備移転三原則は戦時下の国・地域への供給を認めていない。まさに政治資金の裏金同様、抜け道を使っての運用だ。官房長官林芳正は「ウクライナで使用されることは想定していない」ととぼけるが、兵器のロンダリングに関与したツケの想定はあるのか。(K)※敬称略