【政界地獄耳】改憲派が護憲派が気勢も、国民は冷静なのだ - 日刊スポーツ(2023年5月5日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202305050000110.html

憲法記念日のあれこれがニュースになっているが、首相は2月26日の自民党大会で「時代は憲法の早期改正を求めている」という。3日に都内で開かれた第25回公開憲法フォーラム「急げ、憲法に国防条項・緊急事態条項の明記を!」にビデオメッセージを寄せた首相は「時代は憲法の早期改正を求めている」と再度訴え、「戦後、最も厳しく複雑な安全保障環境に直面する中で、自衛隊憲法にしっかりと位置づけることは、極めて重要なこと」とし、「憲法改正の主役は国民だ」「憲法改正に向けた機運をこれまで以上に高めることが重要」とした。そもそも内閣の総理が改憲に積極的な対応に国民が慣れてしまっただけで、立場としてはおかしなことだと冷静に見るべきだ。

★また民間憲法臨調代表・桜井よしこが「憲法改正について、はるかにわれわれ国民の方が前を走っていないか。政治は国民の意思をもっと吸い上げてほしい」とした。一方、護憲派市民団体主催の「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」で共産党委員長・志位和夫は「岸田政権の大軍拡ストップ、この一点で立場の違いを超えて、国民的大運動を起こそう」と訴えた。また立憲民主党代表代行・西村智奈美は「憲法を守らない政権に改憲を発議する資格はない」とした。

★1日の共同通信社世論調査では憲法改正の機運は国民の間で「高まっていない」が「どちらかといえば」を含め計71%という。国会での改憲議論を「急ぐ必要がある」は49%、「急ぐ必要はない」は48%で賛否が拮抗(きっこう)する。恒例行事の政治ビジネスのように改憲派同士が集まり、護憲派同士が集まって気勢を上げている限りこの数字は上がったり下がったりを繰り返すが議論は進まない。「国難迫る」と安全保障でおどかして改憲しても本当の憲法改正にはならないし、志位の言うように「大軍拡ストップ、この一点」でまとまったところで変化は生まれない。国民は桜井の言うほど前を走るどころか冷静だ。(K)※敬称略