【政界地獄耳】菅政権が学術会議に手を入れた理由は? - 日刊スポーツ(2023年2月4日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202302040000036.html

★3日、自民党は国防部会などの合同会議で、政府が今国会に提出する防衛産業の生産基盤強化法案を了承した。防衛装備品を受注している民間企業に対しては、重要な防衛装備品の製造や修理体制を維持するために他の産業より高いレベルでのサプライチェーン(供給網)確保や機密漏洩(ろうえい)防止の仕組みをつくる。関連企業の事業継続が難しい場合は国が生産施設を買い取り、生産・管理を別の民間企業に委託できるようにする。まさに軍需産業の国営化が進むということになる。だが防衛装備品の製造・修理にそれほどの大がかりな仕組みが必要だろうか。それほど壊れた装備がごろごろしているのか。

★これは広い意味で日本の自動車産業の構造が、電気自動車になり家電化していくことから、自動車産業を守ることを意味しているのではないか。戦後の自動車産業、ことに自動車のエンジンの歴史は米国による飛行機産業解体から一段と飛躍したといわれる。そして世界有数の産業になったものの、新たに電気自動車が産業の中心になろうとする今、旧自動車産業技術が防衛装備に代わるということだろう。

★ただ国内防衛整備強化には限界がある。新たな国内製兵器開発にかじを切るとはいえ、実戦経験のない兵器を輸出するといってもなかなか買い手もつかない。早晩、この防衛産業基盤強化は防災安全保障産業基盤強化に姿をかえるのではなかろうか。防衛というより防災とした方が国民にアレルギーがなく、シェルター建設などは大きく産業化する可能性が高い。戦争の準備は地震、台風などの災害対策を軸に軍事転用が可能なもの、つまり両方に対応するものに変わることになろう。何しろ今の防衛費のGDP比で倍になるのだから産業自体が巨大化することは容易に想像がつく。技術開発、雇用創出など良いことしか言わないだろうが、その計画ならば官民学の連携もしやすくなる。菅政権が学術会議に手を入れた理由はこれか。(K)※敬称略