<金口木舌>安全保障と自己決定権 - 琉球新報(2023年1月21日)

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墜落する米軍のB52爆撃機。乗組員6人は脱出したが、機体は積まれていた水爆4発とともに氷上にたたきつけられた。55年前のきょう、デンマークグリーンランドの北西部で起きた事故だ

▼核爆発はなかったが核弾頭が破壊され、放射性物質による大規模汚染を引き起こした。冷戦下で隠蔽(いんぺい)されていた事故の全容が1990年代に明らかになると、住民の批判は自国の政府にも及んだ
▼核持ち込みに反対していた政府が、グリーンランドには米軍による核配備を認めていたからだ。島の住民たちは自治権の強化を求めた。現在は安全保障に関する交渉にデンマークと米国の両政府に加え、グリーンランド自治政府も参加している
▼安保関連3文書が閣議決定され「台湾有事」が取り沙汰される。軍事的緊張が高まれば不利益を被るのは沖縄の住民だ
▼歴史的な政策転換が国会で議論されずに決まるのもおかしいが、当事者である県民の頭越しに進められることも不可解だ。沖縄県民に自己決定権はない。それがこの国の政府の考え方なのだろうか。