(地軸) 子どもの貧困 - 愛媛新聞(2021年12月27日)

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戦後の混乱期、多くの戦災孤児や路上生活の子がいた。子どもの貧困がすぐそばにあった時代。当時の写真を目にすると、彼らはその後、どう生き抜いたのだろうと考えてしまう。

「子どもと貧困の戦後史」(青弓社)によると、貧しさから脱出するきっかけは中卒で就職することだった。高度経済成長期に入ると、世間から貧困そのものが注目されなくなっていく。再び意識が向くのは格差社会が広がる2000年代以降である。

政府は先ごろ、子どもの貧困に関する初の全国調査を公表した。貧困世帯の37%、ひとり親世帯の30%が過去1年間に必要な食料を買えない経験があったという。生活苦から食べたいものを我慢し、やりたいことを諦める。貧しさの内実が浮かび上がる。

親から子への貧困の連鎖リスクも裏付けられた。子どもが大学進学を目指す割合は貧困世帯、ひとり親世帯ともに全体より低い。親の懐事情と無関係なはずがなく、裕福な家庭との差は当事者努力で埋めがたいところにきている。若い心が負う傷も無視できない。

「切っても切れない存在」。子ども食堂に感謝する保護者の声が過去の本紙にあった。支えられているとの実感がこもる言葉を思いだすのは、今回の調査で頼れる人がいないとの回答が少なからずあったから。

年の瀬の過ごし方に気をもむ家庭がある。一段と「見える化」された切実な課題。差し伸べる手を増やす取り組みを強めたい。