<金口木舌>人頭税と基地問題 - 琉球新報(2021年1月22日)

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宮古島の漲水港でにらみあう士族と農民たち。人頭税廃止の要求書を手に東京へ向かう中村十作、城間正安らを阻止しようと、士族らが集まっていた。中村らは緊迫した中で農民たちに背を押され、出発した

1893年に東京へ到着した中村らは国会議員や知識人らを訪ねて農民の苦境を訴えた。要求書は内務大臣にも渡り、95年の帝国議会沖縄県政改革建議案が可決された。250年以上続いた人頭税1903年に廃止された
▼中村らが帝国議会に直訴したのは、島役所や県庁に改革を訴えても士族の反対でらちが明かなかったからだ。古い制度の下、役人による税の不当な徴収などが横行していた
▼中村は新潟県出身で、宮古に真珠を採取する事業で滞在していた。城間は沖縄島から来た製糖指導員だった。宮古の農民を代表して平良真牛、西里蒲も2人に同行した
▼2015年に国連で「沖縄の人々の自己決定権や人権がないがしろにされている」と訴えたのは、当時の翁長雄志知事だ。辺野古新基地建設への反対が多数を占める世論調査や国政選挙の結果を日米両政府が無視する中、国際社会に訴えた構図は人頭税廃止運動と似ている
▼中村は1943年1月22日、京都で死去した。人頭税は特に沖縄島に住む人にとって忘れてはならない史実だ。県民が手を取り合い、自己決定権を行使していくために。