<金口木舌>公営住宅と保証人 - 琉球新報(2020年9月27日)

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-1197959.html

幼少から本紙記者として働く直前まで、那覇市営の団地で暮らした。幼なじみも多かった。今は建設から40年ほどが経過し、高齢者世帯の割合が高くなった

憲法25条は「健康で文化的な最低限度の生活」を保障し、公営住宅はその実例。公営住宅法は、低額所得者など住宅に困窮する人に低廉な家賃で賃貸し、生活の安定などをうたうが、賃貸契約に保証人を必要とする自治体が多い
▼単身世帯の増加などの社会変化を踏まえ、国土交通省は18年の通知で都道府県などに保証人確保を条件から外すよう促した。条例を改正し、保証人不要としたのは今年8月までに16都府県と41市町村。このうち沖縄は伊是名村のみ
▼県司法書士会によると、住居の賃貸契約を結べない高齢者やひとり親の相談が増えている。会長声明では「公営住宅セーフティーネットの中核」として保証人の廃止を求めた
新型コロナウイルスによる経済悪化で、仕事だけでなく住居を失う人も増えた。困窮者に家賃を補助する「住居確保交付金」について、県内の支給決定件数は4~6月で1586件。昨年度全体の約9倍だ
▼コロナ禍で提唱されたニューノーマル(新常態)として、公営住宅の保証人不要は進むだろうか。財源確保との兼ね合いもあるが、沖縄県の最重要課題には子どもの貧困の解決もある。安心して寝食できる住居はその礎だ。