米軍基地の感染 地位協定の矛盾を露呈 - 東京新聞(2020年4月4日)

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新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、在日米軍内にも感染者が出ている。日本側は米兵らの入国を制限できず、感染に関する情報も十分に受けられない。日米地位協定の矛盾が露呈した形だ。
在日米軍側の発表によると、米兵らの感染は三月下旬から相次ぎ確認された。神奈川県の海軍横須賀基地で兵士五人、沖縄県の空軍嘉手納基地では兵士二人と親族一人が発症。長崎県の海軍佐世保基地も三日、一人の感染を明らかにした。いずれも基地や関連施設で隔離され、基地外住民との接触はないと強調している。
ただ、感染者の性別や年代、容体は不明。米国を含む海外から帰国後に感染が分かった例が多いようだが、欧州から帰った嘉手納の兵士については、どの国に行っていたのか、居住地が基地内か基地外かも明らかにされていない。
米軍側からの一方的で断片的な情報しかもたらされないのは、日米地位協定の「壁」のためだ。基地には日本側の自由な立ち入りが認められない。何人の兵士や家族が基地内にいて、どんな訓練を行っているかも基本的には明かされない。コロナ禍に対しても保健所などによる調査は当然及ばない。
さらに、日本政府がどれほど外国人の入国制限を強化しようと、米兵はもともと入国審査の対象になっておらず適用外だ。検疫を受ける義務もない。今後も感染拡大国から米兵が入国することがあっても、日本側は実態を把握したり阻止したりすることができない。
在日米軍施設が、政府や自治体が懸命に取り組むコロナ対策の「抜け穴」になりかねない事態である。一部で共用されている自衛隊基地の防護も重要だ。
国防総省は三月末、個別の部隊や基地ごとの感染者数を公表しない方針を示した。安全保障上の理由からだが、基地は一層「ブラックボックス」化し、住民の間に無用な不安を広げる恐れがある。
日米両政府は二〇一三年、感染症を巡り、在日米軍と日本の衛生当局間の情報交換について覚書を交わした。外務省は、新型コロナに対しても、各基地と自治体間で情報共有はできていると説明するが、沖縄県などは不十分だと指摘している。日本政府は、覚書の厳格運用に努めなければならない。併せて、感染症対策の盲点として浮かび上がった地位協定の見直しも進めるべきだ。
感染者二十万人超に達した米国と直結している在日米軍基地を特別扱いしている場合ではない。