麻生氏の不適切発言 閣僚としての見識を疑う - 琉球新報(2020年1月16日)

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またしても見識を疑わせる発言が飛び出した。麻生太郎副総理兼財務相である。
13日に福岡県直方市で開かれた国政報告会で「2千年の長きにわたって一つの言葉、一つの民族、一つの王朝が続いているなんていう国はここしかない」と述べたのである。
アイヌ民族の存在を否定するに等しい発言だ。政府は昨年5月に施行したアイヌ施策推進法で、アイヌを「先住民族」と位置付けている。政府の見解とも矛盾する。
麻生氏は第2次安倍内閣が発足した2012年12月から副総理兼財務相のポストにある。自らも加わって閣議決定した法案の中身を理解していないのだろうか。
14日の閣議後記者会見で「誤解が生じているならおわびの上、訂正する」と述べたが、なおも釈然としない。
「政府の方針を否定するつもりは全くない。日本は比較的まとまった形で2千年近くの間、継続してきたということを述べただけだ」と開き直っているからだ。
総務相だった2005年にも「(日本は)一国家、一文明、一言語、一文化、一民族。ほかの国を探してもない」と発言し、北海道ウタリ協会から抗議された経緯がある。
今回の発言は、かつて国として独立していた琉球の存在も無視している。歴史を踏まえない妄言でしかない。
この間、麻生氏はたびたび不適切な発言をしてきた。昨年2月には、少子高齢化問題に関連し「子どもを産まなかった方が問題だ」と述べ、批判を浴びた。
子を産むかどうかは個人の選択であり、つくりたくても持てない人もいる。人権感覚を欠いた主張だ。
財務事務次官が18年に女性記者に対するセクハラで辞任した際には「はめられ訴えられているんじゃないかとか、いろいろなご意見は世の中いっぱいある」などと述べている。被害者を二重に傷つける発言だった。
13年には東京都内での講演で「ドイツのワイマール憲法はいつの間にか変わっていた。誰も気がつかない間に変わった。あの手口を学んだらどうか」と述べた後、撤回している。国際的な影響力を持つユダヤ系団体は「ナチスのどの『手口』を学べると言うのか。こっそりと民主主義を後退させる方法か」と強く非難する声明を発表した。
不適切な発言が後を絶たないにもかかわらず要職にとどまっているのが麻生氏だ。安倍晋三首相は、麻生氏が何を言っても不問に付し、森友学園を巡る決裁文書改ざんという不祥事があった後でさえ再任させた。自浄作用が働かない政権と言うほかない。
政治家には、平素から人権に最大限配慮した言動が求められる。社会的な影響が大きいからだ。
非常識な放言や妄言を繰り返す人物が閣僚の任にふさわしいはずがない。安倍首相の任命責任が問われよう。