(大弦小弦)1988年の米映画「トーチソング・トリロジー」はゲイの中年男と… - 沖縄タイムズ(2018年9月27日)

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1988年の米映画「トーチソング・トリロジー」はゲイの中年男と同性愛を認めない老母の葛藤を描く。全て分かり合えなくても人間は尊重し合える。性的少数者(LGBT)を「生産性がない」と言う人にこそ見てほしい名作だ

▼LGBTへの差別表現が批判された月刊誌「新潮45」が休刊を決めた。8月号の杉田水脈衆院議員の論文を擁護する10月号にはLGBTを「ふざけた概念」とし、痴漢が触る権利の保障を叫ぶ暴論も掲載された

▼新潮社は「部数低迷」からの「試行錯誤」で「編集上の無理が生じた」と釈明した。老舗出版社が少数者を傷つける差別表現を商売にした理由として納得できるはずもない

▼社長も企画に「偏見」があったと認めたが、どの部分かは明かしていない。当事者への謝罪もなかった

▼一連の論文には弱者、少数者の権利保障への強い嫌悪感が漂う。違う価値観を理解しようとする姿勢もない。書き手たちが今後、別の媒体で憎悪をまき散らし続けるなら、何も解決しない

▼東京の青山ブックセンター本店は「ヘイト本は一切置かない」という。書店員の山下優さんが日刊工業新聞ニュースサイトのインタビューで理由を語っている。「売上は重要だけれど、ヘイト本を売り続けた先の想像力が足りないのではないか」。職業人としての矜恃(きょうじ)に100%同意する。(田嶋正雄)