伊方3号機 再稼働容認 安全評価 国の方針に追従 - 東京新聞(2018年9月26日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201809/CK2018092602000143.html
https://megalodon.jp/2018-0926-0924-19/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201809/CK2018092602000143.html


高裁段階で初めて原発の運転を差し止めた仮処分決定を覆し、四国電力伊方原発3号機の再稼働を認めた二十五日の広島高裁決定は、一万年に一回程度とされる大噴火のリスクへの対策を求めるには「相当の根拠が必要」と指摘、従来の国の方針に沿う判断となった。
昨年の決定は、可能性が低いとされる破局的噴火のリスクも考慮するよう求め、原発再稼働を進める国や電力会社に衝撃を与える内容だった。運転停止を求め司法の場で争う全国の住民らにとって、噴火リスクは有利な争点として存在感を増している。
それだけに、破局的噴火について「発生頻度は著しく小さく、原発の安全性に問題はない」とする従来型の認識で原発の再稼働を認めた今回の決定は、脱原発派にとって大きな痛手となるだろう。
伊方3号機は十月二十七日の再稼働に向け、本格的な準備に入るが、今回の決定でも「現在の火山学では破局的噴火を正確に予測することは困難」と言及しているように、「想定外」の災害が起きる可能性はゼロではない。また、危険性の判断を「社会通念」という観点に委ねるのも、基準が曖昧と言わざるを得ない。
電力会社や国は決定を「免罪符」とせず、あらゆる危険を想定し、対策を尽くしていくべきだ。 (共同・池田絵美)

   ◇

四国電力伊方原発3号機の運転を差し止めた即時抗告審の仮処分決定を取り消し、再稼働を認めた二十五日の広島高裁の異議審決定要旨は次の通り。

【火山の評価】
原子力規制委員会が安全性を審査する内規として策定した「火山影響評価ガイド」は、立地評価と影響評価を行うこととしている。立地評価は、検討対象火山の噴火時期や程度が相当前の時点で、相当程度の正確さで予測できることを前提にするが、中長期的な噴火予測の手法は確立しておらず、内容は不合理だ。 
国電は立地評価で、熊本県阿蘇カルデラの過去最大の噴火である阿蘇四噴火(約九万年前)の火砕流伊方原発敷地に到達していないとしているが、相当程度に確かな立証が必要なため、到達の有無の判断はできない。破局的噴火の可能性を予測することも困難だ。
現在の火山学の水準で、原発の安全性確保の観点から、巨大噴火の危険をどのように想定すべきかについては、わが国の社会が自然災害に対する危険をどの程度まで容認するかという社会通念を基準として判断せざるを得ない。

破局的噴火】
阿蘇カルデラ阿蘇四噴火と同程度の破局的噴火が発生した場合、ほとんど対処する間もなく、膨大な数の国民の生命が奪われ、国土は壊滅に至る被害をもたらす。しかも現在の知見では前駆現象を的確に捉えることはできず、具体的予防措置を事前に取ることはできない。一方で、発生頻度は著しく低く、国は破局的噴火のような自然災害を想定した具体的対策は策定しておらず、策定の動きがあるとも認められないが、国民の大多数はそのことを格別に問題にしていない。
破局的噴火で生じるリスクは発生可能性が相応の根拠をもって示されない限り、原発の安全確保の上で自然災害として想定しなくても安全性に欠けるところはないとするのが、少なくとも現時点におけるわが国の社会通念だと認めるほかない。
そこで原発の運用期間中に破局的噴火が発生する可能性が相応の根拠をもって示されない限り、これを前提として立地不適としなくても法の趣旨に反するということはできない。また設置許可基準の趣旨にも反しない。

火砕流の危険性】
そうすると火山ガイドの立地評価の「設計対応不可能な火山事象」とは、そのような噴火を除いた火山事象と解して判断するのが相当だ。阿蘇において、破局的噴火が伊方原発の運用期間中に発生する可能性が相応の根拠をもって示されているとは認められない。地理的領域内の火山噴火のうち、阿蘇について、火砕流堆積物の分布は、破局的噴火を除けば阿蘇カルデラ内に限られる。設計対応不可能な火砕流が到達する可能性が十分小さいと評価できるから、立地は不適とはならない。

【降下火砕物】
国電の降下火砕物の層の厚さの想定は合理性がある。火山ガイドなどで新たに想定すべきだとした気中降下火砕物濃度に対しても、非常用ディーゼル発電機の機能が喪失しないよう対策を講じるなどしており、基準に適合する蓋然(がいぜん)性があると認められる。

【火山以外の危険性】
抗告審決定と同様、新規制基準は合理的で、伊方原発が新規制基準に適合するとした原子力規制委の判断に不合理な点がないと言える。