(大弦小弦)人材という言葉は使いません。人は何かの材、じゃない… - 沖縄タイムズ(2018年9月6日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/310252
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「人材という言葉は使いません。人は何かの材、じゃない」。那覇市フリースクール、珊瑚舎スコーレの星野人史代表(70)を取材した際、明快な言葉に感銘を受けた。スクールや夜間中学の理念を表していた

▼ロックバンド、ブルーハーツの曲の一節を聴いたときのように共感した。「世界中に定められたどんな記念日なんかより/あなたが生きている今日はどんなに素晴らしいだろう」

▼中央省庁や地方自治体の障がい者雇用水増し問題の報道に接し、星野さんの言葉を思い出した。国が定めたルールを自ら破るずさんな実態にあきれる。「一億総活躍社会」の掛け声がむなしい

▼国の行政機関の8割に不正があり、雇用者の半分が水増しだった。障害者手帳を持っていない人や病気の申告者を数に算入するなどの手法も似ている。いずれも意図的でないと説明するが、にわかに信じがたい

▼できれば障がい者を雇いたくない、という意識が透けて見える。杉田水脈衆院議員が月刊誌への寄稿で性的少数者を「生産性がない」とした考えにも通じる。役に立つかどうかで人の価値を測る社会に未来があるとは思えない

▼不祥事を受け、国は雇用率達成を急ぐ方針だという。単なる数合わせであってはならない。「雇ってあげる」のでなく、多様な人が共生する職場にこそ学ぶべきものがある。(田嶋正雄)