障害者水増し 糖尿病、緑内障、腎臓がんも算入 チェックなく長年放置 - 東京新聞(2018年8月29日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201808/CK2018082902000133.html
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障害者雇用を率先して進めるはずの中央省庁の多くで、お手盛りの運用が浮き彫りになった。
一九七六年の制度発足当初から厚生労働省は、雇用率に算入するのは、障害者手帳を持っているか、指定医の診断書で障害を認められた人に限っていた。だが、各省庁の運用の実態はずさんだった。「健康診断結果を基に本人に確認せず算入していた」(国土交通省)、「聴力を確認せずカウントした」(防衛省)、「人事関係の書類に本人が書いた健康状態や病名を基に判断していた」(法務省
雇用水増しの理由について、各省庁はこの日、所管する厚労省が示す障害者の範囲を「拡大解釈していた」と釈明した。
厚労省は毎年、各省庁や地方自治体に六月一日時点の障害者雇用率の報告を求めている。その際の通知に「原則として、障害者手帳の交付を受けている者」と記載したことで、「必ずしも手帳の確認は必要ない」という別の解釈を招いた。所管する厚労省は「各省庁の誤り」とみなす一方、「分かりにくいという話もあり、例外があるように読める余地があった」として、本年度の通知から「原則として」の文言を外した。
水増しのあった省庁は「制度が始まった頃から誤って運用していた可能性がある」「前任から引き継いできた」などと説明しており、水増しは長年続いていたとみられる。
厚労省は二〇〇五年にもガイドラインで「対象の障害者の手帳で確認」と周知していた。なぜ、誤った運用が放置されてきたのか。厚労省は「性善説に立ってチェック機能がなかった」との見解を示す。
障害者雇用促進法で、民間企業には三年ごとに調査があり、定められた雇用率に届かない企業はペナルティーとして納付金を支払わなければならない。一方で、省庁や地方自治体には調査も納付金の支払い義務もない。政府は今後、問題の検証やチェック機能の強化を図るという。
問題は意図的な水増しがあったかどうかだ。千人以上を水増ししていた国税庁では糖尿病の人、文部科学省では障害者手帳のない緑内障や腎臓がんの人を算入。国税庁幹部は「漫然とやっていた」と話す。
理解不足を強調する各省庁。厚労省は「第三者委員会の検証に委ねる」とし、明言を避けた。総務省の担当者は「数が多い方がいいというのは、たぶんあった」と本音をのぞかせた。
日本盲人会連合会長の竹下義樹弁護士は「病人まで障害者としている。悪意を持った数字合わせであり、雇用率をごまかす意図があったとしか思えない」と水増しの故意性を批判した。 (中沢誠、福岡範行)